バーデン・ビュルテンベルク州、「水素ロードマップ」を策定

(ドイツ)

ミュンヘン発

2021年01月06日

ドイツのバーデン・ビュルテンベルク(BW)州は12月15日、「水素ロードマップPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を閣議決定した。水素技術分野で先行するための、今後数年の道筋や具体的措置を明らかにしたものだ。

本ロードマップは、州環境・気候・エネルギー経済省が2020年4月に作成を提案、他省庁、関係者などと協議の上、今回の決定に至った。本ロードマップの目的について環境省は、(1)産業、交通、エネルギー部門で使用される化石燃料を抑制し、温室効果ガス削減に寄与すること、(2)州を水素・燃料電池技術の先行地とすべく、州内の水素経済の構築・拡大に寄与すること、としている。

ロードマップでは、取り組むべき重点が特定され、29の具体的措置が明記された。州は、(1)水素技術を最も活用すべきは運輸部門で、特に、鉄道輸送・長距離輸送を優先すべきこと、(2)素材や化学をはじめとした産業部門でも水素技術活用の可能性が多くあること、(3)電力貯蔵とセクターカップリング(注)でも水素が重要になること、(4)水素の製造・輸送・貯蔵のインフラを可能な限り早く構築すべきこと、を強調している。ロードマップでは、2020年6月にドイツ連邦政府が発表した水素戦略についても言及、連邦政府の水素戦略(2020年9月9日付地域・分析レポート参照)とEUの水素戦略(2020年7月10日記事参照)を基礎として、本ロードマップを作成したとしている。

水素・燃料電池産業が州にもたらす効果の可能性は大きい。州環境省がローランド・ベルガーに委託した調査レポートによると、BW州企業は2030年に、水素・燃料電池関連で90億ユーロを売り上げ、23億ユーロの付加価値を生み出す可能性がある。また、特に交通部門を中心に、関連雇用は約1万6,500人に上る可能性があるという。州は、水素・燃料電池産業が、とりわけ自動車産業の構造転換に直面する州経済の将来の競争力に大きく寄与するとみている。長期的には、州内企業が水素・燃料電池関連技術や機械、部材を提供する位置を占めることもできるとしている。

州内の水素関連のプロジェクトも進んでいる。例えば、州内の太陽エネルギー水素研究センター(ZSW)とフラウンホーファー・太陽エネルギーシステム研究所(ISE)は共同で、燃料電池製造を研究する「HyFab」プロジェクトを実施、州は2019年12月から合計1,850万ユーロを助成した。また、運輸部門での水素活用では、同州の北に位置するライン・ネッカー地域が水素推進地域「HyLand」に選ばれ、連邦政府から2,000万ユーロの助成を得て、州からも同額の助成を受けることが決まっている。「HyLand」を通じて、同地域に水素充填(じゅうてん)ステーション、燃料電池車、水素バス、ごみ収集車、路面清掃車などが導入される予定だ。

(注)電力、交通、産業部門など異なる部門のエネルギー需給を全体で最適化することにより、エネルギーの無駄をなくすことを目指す概念。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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