全米住宅価格指数、前月比で2年2カ月ぶり下落、9地域中8地域で指数低下

(米国)

ニューヨーク発

2022年09月29日

米国連邦住宅金融庁(FHFA)が9月27日に発表した7月の全米住宅価格指数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは前月比マイナス0.6%で、2020年5月以来2年2カ月ぶりの減少となった。前年同月比では13.9%上昇し、その伸びは前月の16.3%上昇から鈍化した。住宅価格の前年比伸び率は2021年に過去最高の値を記録するなど(2022年5月9日付地域・分析レポート参照)、新型コロナ禍で高い伸びを記録し続けてきたが、連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めを背景に、住宅市場は急激に冷え込んできており、住宅価格もそのピークをつけ始めている可能性がある。

発表によると、7月の指数は全米9地域中8地域で前月から減少した。特にカリフォルニア州などの太平洋地域(マイナス1.6%)、コネチカット州やマサチューセッツ州などのニューイングランド地域(マイナス1.1%)、アリゾナ州などの山岳地域(マイナス1.0%)は1.0%以上減少した。唯一上昇したのはミシガン州などの中北東部で、0.1%の微増だった。

同日発表された7月のS&Pコアロジック・ケース・シラー指数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(主要20都市、注)についても、前月比マイナス0.8%(6月:0.4%上昇)となり、2012年以来初めて減少に転じた。前年同月比では16.1%上昇で、その伸びは前月(18.7%上昇)から鈍化しており、全米住宅価格指数と同様の推移がみられる。

住宅価格上昇の要因としては、さまざまな点が指摘されているが、中でも新型コロナ禍をきっかけとした在宅勤務の普及が特に挙げられることが多い。サンフランシスコ連邦準備銀行は9月26日に発表したレポートで、住宅価格の上昇の6割以上は在宅勤務の普及が寄与しているとし、在宅勤務が1ポイント増加すると住宅価格は約0.9ポイント上昇するという試算結果を示している。また、在宅勤務の増加傾向が続いていることから、住宅価格やインフレに影響を与え続ける可能性が高いと指摘しており、住宅価格の高止まりを示唆している。

住宅価格の高騰は賃料への影響などを通じて高インフレの要因となることから、上昇の一服は朗報だ。賃料についても、ニューヨーク市マンハッタン地域の8月の賃料中央値が前月から1.2%下落し、6カ月続いた上昇が止まるなど(2022年9月26日記事参照)、上昇トレンドからの変化の兆しも見られる。FRBはインフレの低下が確実と確認できるまで金融引き締めを続ける姿勢を取っており、今回の住宅価格の上昇一服が今後も続くかが注目される。

(注)FHFAの全米住宅価格指数は、連邦住宅金融抵当公庫(フレディマック)などの政府系金融機関からの融資を受けた一戸建て住宅ローンの価格が対象なのに対して、S&Pケース・シラー住宅価格指数は信用力の低いものや高額物件なども対象にしているなどの違いがある。

(宮野慶太)

(米国)

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