米NY市マンハッタン、8月の賃料は4,100ドルで上昇一服

(米国)

ニューヨーク発

2022年09月26日

米国住宅仲介会社のダグラス・エリマンが9月22日に発表したレポート(作成は不動産評価・コンサルティング会社のミラー・サミュエル)によると、ニューヨーク(NY)市マンハッタン地域の8月の賃料中央値は月額4,100ドル、前月比1.2%下落となり、6カ月続いた上昇が一服したことが明らかになった。調査対象はマンハッタン地域の賃貸アパートやコンドミニアムなどで、同賃料は2022年2月から過去最高値を更新し続けていた。

高インフレに苦しむ米国経済において、その1つの要因となっているのが住居費の上昇だ。8月の消費者物価上昇率は前年同月比8.3%で、消費者物価全体の3割強のウエートを占める住居費が6.2%上昇と全体の上昇に大きく寄与していた(2022年9月14日記事参照)。NY市マンハッタン地域は、全米の中でも最も賃料が高額な地域として知られており(2022年9月5日記事参照)、前月比とはいえ、代表的な地域での賃料の頭打ち傾向は朗報で、9月以降もこれが続くかどうか注目される。ただし賃料の中央値は、前年同月比では26.0%上昇していることに加え、空室率は2.17%の低水準となるなど、需給逼迫および賃料高止まりは続いている。

賃料は住宅価格動向に連動する特徴があり、連邦準備制度理事会(FRB)による高インフレ抑制のための急激な金融引き締めの影響で、30年固定住宅ローン金利は9月22日時点で6.29%と、2021年12月30日時点の3.11%から2倍以上の水準に達している。住宅販売の約8割を占める中古住宅販売件数は、8月に480万件と1月の649万件からは約26%減少しており、金利上昇の影響が直撃しているとみられる。ケース・シラー住宅価格指数(注)をみると、住宅数自体が不足していることから、前年同月比では6月18.0%上昇(5月:19.9%上昇)と引き続き高いものの、前月比では0.3%上昇(1.3%上昇)と頭打ちの兆しも見られ始めている。

ジェローム・パウエルFRB議長は9月21日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見において、住宅価格について「これまで持続不可能なペースで上昇してきた」「価格下落はファンダメンタルと実際の住宅価格を一致させる動きで良い傾向だ」、家賃については「家賃インフレはしばらく高止まりすると考えている」と述べている。

(注)米国の住宅価格の水準を示す指数。2000年1月を100として算出。

(宮野慶太)

(米国)

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