米主要港のコンテナ輸入量は減速するも、物流の混乱は継続

(米国)

ニューヨーク発

2022年09月13日

全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社のハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(9月7日)によると、7月の米国小売業者向けの主要輸入港(注)の輸入コンテナ量は前月比3.1%減の218万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算)となった。直近の貨物取扱量は、パンデミック前の水準を上回っているが、年間コンテナ輸入量が過去最多に達した2021年と比較すると伸び率は緩やかになっており、少なくとも2023年1月まで減少傾向が続く見通しだとしている。

今回の発表を受け、ハケット・アソシエイツの創設者ベン・ハケット氏は「西海岸で入港待ちの船舶の数は、ほぼ通常にまで減少している」と述べた上で、米国西海岸では太平洋海事協会(PMA)と国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の間での労使交渉の行方が不透明な中、「一部の貨物が東海岸に切り替わったことで、港の混雑と圧力は東海岸に移っている」と述べた。東海岸の港湾への輸入は前年比12%増と急増しているのに対し、西海岸の港湾は0.2%増と伸びの推移は緩やかになっている(2022年8月12日記事参照)。こうした背景から、東海岸で最大のコンテナ貨物取扱量を誇るニューヨーク・ニュージャージー港では、同港湾の長期滞留の空コンテナを削減するために、海運会社に対してコンテナ・インバランス料金(コンテナの保守管理費用)を9月1日から適用することを8月に提案している(2022年8月4日記事参照)。しかし、パブリックコメントにおいて、海運会社は、このような追加料金は「意図しない結果」をもたらすと反対し、追加料金の適用は一時的に停止されることになった。今後の計画について、港湾局は、料金導入はまだ予定されているものの、当初提案されたものとは異なるものになるとみられる(サプライチェーンダイブ9月8日)。

西海岸の港湾の混雑状況は改善しているものの、鉄道で輸送するコンテナの荷さばきは遅延が続いている。物流関係者らによると、ロサンゼルス港とロングビーチ港では、鉄道の遅れが12日間に及び、トラックと鉄道を組み合わせて移動するコンテナの場合、遅延日数は30日間に達している(CNBC9月7日)。ハケット氏は「内陸部のサプライチェーン、特に鉄道は引き続き困難に直面しており、港から出るコンテナが遅れ、ターミナルの混雑を引き起こし、輸送会社の荷役能力に影響を与えている」との懸念を示した。

米国の鉄道会社では労使交渉が行われているが、協議に参加している12の労働組合のうち貨物鉄道会社と暫定合意に達したのは5組合にとどまる(2022年9月8日記事参照)。ジョー・バイデン大統領は、主要鉄道会社とその労働者11万5,000人を代表する労働組合との間の労使交渉の行き詰まりを打開するため、大統領緊急委員会(PEB)を任命しており、両者は9月16日までに同委員会の警告に基づく協定を締結する必要がある(2022年7月20日記事参照)。米国鉄道協会(AAR)によると、双方が合意に至らず、鉄道サービスが停止した場合、米国経済に1日当たり20億ドルの追加コストをもたらすと警告しており、最近のインフレに拍車をかける可能性がある(2022年9月12日記事参照)。

(注)主要輸入港には、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトルおよびタコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミおよびジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港が含まれている。

(樫葉さくら)

(米国)

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