バイデン米大統領、鉄道業界の労使交渉仲裁の緊急委員会を創設

(米国)

ニューヨーク発

2022年07月20日

米国のジョー・バイデン大統領は715日、国内鉄道業界で続いている労使交渉の解決に向けて、専門家で構成する大統領緊急委員会(PEB)を創設する大統領令に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

米鉄道業界では20201月から、30を超える主要な国内鉄道会社を代表する全米鉄道労務会議(NRLC)と、それら鉄道会社の従業員約115,000人が組成する12の労働組合との間で、主に賃上げを争点とした労使交渉が継続している。直近では、連邦政府機関の全国仲裁委員会(NMB)が仲裁に当たっていたが、617日に不調に終わった。鉄道労働法によると、その翌日から30日が経過する718日までに労使間での合意またはPEBの創設がなければ、労組側がストライキなどの自力救済措置に訴えることが可能となっていた。このような経緯があり、バイデン大統領は上記期限である718日付でPEBを創設した。

PEBは議長と2人の委員で構成し、30日以内に争議内容を調査して、大統領に解決策を報告することになっている。PEB創設時点から大統領への報告提出までの30日間は鉄道労働法で「クーリング・オフ」期間とされ、労使はその間、交渉妥結に向けた努力を継続し、ストライキなどに訴えてはならないことになっている。

鉄道業界のストライキの可能性を受けて、小売業を中心とした米業界団体は7月上旬、バイデン政権に対して仲裁に当たるよう働きかけていた。全米小売業協会(NRF)は715日、バイデン政権の動きを評価するとともに、「(夏季休暇明けの)学校再開と冬のホリデーシーズンに向けて輸送がピークに差し掛かる中、この秋に鉄道サービスを中断させることなく合意に達するために、(労使間の)双方が交渉を再開することが非常に重要だ」との声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出している。小売業界リーダーズ協会(RILA)も712日、同様の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表している。新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻を受けて混乱を続けるサプライチェーンに関して、新たな懸念要因を取り除けるか、バイデン政権の手腕が問われる。なお、NRLCによると、労使交渉が決裂し、ストライキにより全米の鉄道運航に影響が及んだ直近の事例は、1992年の2日間のみとされている。

(磯部真一)

(米国)

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