2022年の米主要港の輸入コンテナ量、前年比2%増の見通し、東海岸での取扱貨物量が増加

(米国)

ニューヨーク発

2022年08月12日

全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社のハケット・アソシエーツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー」(8月8日)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2022年上半期の米国の小売製品の主要輸入港(注1)の輸入コンテナ量は前年同期比5.5%増の1,350TEU1TEU20フィートコンテナ換算)となった。他方、下半期の輸入量は前年同期比1.5%減の1,280TEUと推定している。2022年全体では前年比2%増の2,630TEUと見込んでおり、過去最高水準に達した2021年の2,580TEUを上回るとしている。

2022年下半期の輸入量について、NRFで税関担当バイスプレジデント(サプライチェーン・税関担当)を務めるジョナサン・ゴールド氏は「小売売り上げは伸びているが、経済は減速しており、それが貨物輸入に反映されている」とした。また「荷動きの減少により、一部の港湾では混雑が緩和されるかもしれないが、他の港湾では依然として渋滞が発生しており、世界的なサプライチェーンの課題は決して終わってはいない」と述べた上で、最大の懸念事項は、米国西海岸の港湾と貨物鉄道の労使交渉が別々に行われているため、混乱が生じる可能性があると指摘した。

西海岸のロサンゼルス港とロングビーチ港は合わせて米国の輸入コンテナの40%を取り扱い、例年の港湾活動では最大のシェアを占めているが、2022年については、東海岸の港湾の貨物の取扱量増加が顕著だ。ニューヨーク・ニュージャージー港やバージニア港、サウスカロライナ州のチャールストン港などでは、コンテナに滞留する貨物量は、2021年と比較して2桁台の増加率となっている。また、東海岸への積み荷輸入は前年比12%増と急増しているのに対し、西海岸の港湾は0.2%増と伸びの推移は緩やかとなっている。物流会社ITSロジスティクスのバイス・プレジデント(ドレージ・インターモーダル担当)のポール・ブラッシャー氏は、西海岸から東海岸への輸送シフトの背景に、労働力不足に対する懸念や国際港湾倉庫労働組合(ILWU、注2)のストライキの脅威があると指摘している。一方で、同氏は、東海岸への輸送シフトの影響で、ロサンゼルスとロングビーチ港は新学期の学校再開の季節とブラックフライデー(注3)に向けて、より多くのコンテナを引き受けられる状況にあるとも述べている(「マーケットウォッチ」810日)。

東海岸の港湾の貨物取扱量の急増により、ニューヨーク・ニュージャージー港湾局は82日、同港湾に空コンテナを長期滞留させた海運会社に対してコンテナ1個につき100ドルの手数料を課すと発表するなど、対策を講じている(2022年8月4日記事参照)。

(注1)主要輸入港には、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトル、タコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミ、ジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港が含まれる。

(注2)主に西海岸の港湾労働者で構成する労働組合。

(注311月の第4金曜日を指す。米国では11月から12月が年末商戦期間に当たり、近年は同日前後に大型セールが実施される。

(樫葉さくら)

(米国)

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