北米バッテリーショー、EV化促進を受け例年を超える盛況ぶり
(米国)
ニューヨーク発
2022年09月22日
北米バッテリーショーが米国ミシガン州デトロイト郊外のノバイで、9月13~15日に開催された。主催は、インフォルマ・マーケッツ。京セラなど日系企業を含めたバッテリーの部品・材料メーカー848社が出展し、セミナーでは150人以上が登壇した。来場者は2万人以上に上った。主催者によると、いずれも例年を上回る規模となっており、電気自動車(EV)普及に向け米国政府による各種政策が発表される中で、バッテリー業界に対する関心が高まっていることがうかがえる展示会となった。
セミナーでは、主にEV用リチウムイオンバッテリーの市場や技術動向のほか、8月に成立したインフレ削減法(IRA)に盛り込まれた、EV税額控除の対象条件であるバッテリー部品・材料の調達要件(2022年8月5日記事参照)や、2021年11月に成立したインフラ投資雇用法の下でのバッテリーサプライチェーン構築に向けた支援策(2022年5月10日記事参照)などについて、議論された。
コンサルティング会社ローランド・ベルガーのシニアパートナー兼先端技術センターグローバルヘッドのベルンハルト・ヴォルフガング氏は、2030年までに北米のEV(注)とハイブリッド車(HEV)の合計販売台数が全販売台数の60%に達し、バッテリー不足が深刻化するとの同社予測を発表。「主要原材料であるリチウムは自由貿易協定締結国であるオーストラリアやカナダからの調達が期待できるが、現在、中国が多くのシェアを占める精製を含む処理過程を早期に国内化する必要がある」と述べた。また、鉱物の採掘から処理過程における上流工程と、自動車メーカーを中心とする下流工程それぞれの事業統合によるサプライチェーン効率化で、生産期間とコストの削減を行うよう提言した。そのほか、ゼネラルモーターズ(GM)のEV政策および規制関連担当ディレクターのマイケル・マテン氏は、今後、米国内におけるバッテリーセルの生産能力の大部分が、アジア企業との合弁事業を通じて行われるとの見方を示した。
鉱業業界からは、新たな商機との期待の声も上がった。鉱物探査会社タロン・メタルズの渉外および環境戦略チーフのトッド・マラン氏は、米国やカナダでニッケルを採掘する場合、現在、生産量首位のインドネシアに比べ二酸化炭素(CO2)の排出量が約半分に抑えられるなど、環境対策の面からも国内生産のメリットを強調。一方で、鉱物採掘会社ポリメット・マイニングの代表兼最高経営責任者(CEO)のジョン・チェリー氏は「ミネソタ州でのニッケルを含む採掘プロジェクトの許可取得に10年要した上、さらにその後、環境団体などによる22件の訴訟に対応した」と述べ、事業化の難しさも紹介した。また、リサイクルを含むライフサイクル構築の重要性が議論される中で、マラン氏は「十分な材料が確保されていない現状ではリサイクル可能な規模に達していない。まずは国内でどのように、どこで鉱物を採掘、生産するかについて話し合う必要がある」と述べた。
(注)バッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)。
(大原典子)
(米国)
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