米国で新型コロナ感染後遺症による就労困難者、フルタイム当量で約400万人とシンクタンク推計

(米国)

ニューヨーク発

2022年09月12日

米国ワシントンのシンクタンク、ブルッキングス研究所が8月24日に公表したレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、新型コロナウイルス感染症の後遺症によって職場に復帰できない者がフルタイム当量で約400万人いる可能性があると指摘した。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、後遺症が残る割合は18~64歳では5人に1人、65歳以上では4人に1人程度とされているが(2022年6月6日記事参照)、今回のレポートではさらに進んで、就労困難者の具体的人数にまでアプローチした。

具体的な算出方法は以下のとおり。CDCによると、米国人の70%が既に新型コロナウイルスに感染しており、うち24.1%が後遺症に苦しむとされ、生産年齢人口(15歳から64歳)に当てはめれば、3,400万人が該当するという。さらに、ミネアポリス連邦準備銀行の調査では、後遺症から回復したとの回答は50%で、残りの50%に当たる生産年齢人口の1,700万人がいまだ後遺症に苦しんでいることになる。加えて、後遺症により仕事に戻れていないとの回答は、各種調査では20%から22%となっており、労働時間の短縮を考慮すると、フルタイム当量で約400万人が後遺症により就労困難となっている可能性があるとしている。レポートでは、仮に400万人が就労困難となっている場合の逸失賃金は年間で約2,300億ドルに達し、加えて、新型コロナウイルス感染による医療費の増加などによって年間5,440億ドルのコストが別途生じると指摘している。

8月の雇用統計で平均賃金の上昇率は前年同月比5.2%と高止まりしているが(2022年9月5日記事参照)、この一因とされるのが労働者不足だ。労働参加率は新型コロナ感染拡大前と比べて約1ポイント低く、労働力人口は感染拡大前と比べて約400万人少ないとされる。労働者確保のため企業は賃金を上げざるを得ず、このコスト上昇分を商品価格に転嫁、高インフレを助長する一因となっている。これまでアーリーリタイア(早期退職)層の増加などが労働者不足の要因と指摘されてきたが、新型コロナの後遺症もこれに強く作用している可能性がある。

同レポートでは、新型コロナの後遺症による経済的負担を軽減するための政策的措置が必要だとして、感染予防や治療薬などより利用しやすい選択肢を広げることや、有給病気休暇の拡大、職場環境の改善、障害保険の利用を拡大していくことが重要だと指摘している。

(宮野慶太)

(米国)

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