メタバース・NFT市場の知的財産保護でジェトロがウェビナー

(日本、世界)

知的財産課

2022年09月22日

ジェトロが事務局を務める国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)(注1)は8月26日、「メタバースおよびNFTマーケットプレイスにおける知的財産保護について」をテーマにウェビナーを開催し、276の企業・団体が参加した。

本ウェビナーでは、エンターテインメント、ファッション、テクノロジーの知財法務を手掛ける弁護士・上級VR技術者の関真也氏(関真也法律事務所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を講師に迎えた。関氏は、「メタバース」(注2)と「NFT」(注3)という言葉が多義的に用いられている現状のなか、その実態や特徴を解説した。また、知財保護の観点から、両者を切り分けて対策を検討する必要があるとの見解を示し、デザインを保護する知的財産権など(著作権、意匠権、商標権、不正競争防止法による保護)について比較・整理を行った。さらに、メタバース、NFTのそれぞれに係る知的財産権保護のポイントや、韓国、EUでの取り扱いなどについて解説した。主な内容は以下のとおり。

メタバースと知的財産権保護について

〇意匠法では、いわゆる操作画像や表示画像にあたる画像であれば、画像意匠(注4)として保護対象となる。もっとも、メタバース内のオブジェクトには、操作画像や表示画像ではなくコンテンツ(機器とは独立してその内容自体を表現の中心として創作される画像・映像)に当たり、意匠権ではなく著作権による保護を検討すべきものも多い。このように、意匠法と著作権法のどちらで保護されるかは、その画像が果たす役割に応じて判断される。

〇商標法では、メタバース上の商品と現実商品の類否判断において、誤認のおそれがあるか否かを判断する要素である「生産・販売部門」「用途」「原材料」「需要者」などの共通性が問題となる。商品の種類によって、その判断は異なり得る。そのため、最近では、バーチャル商品などを指定商品・役務にする出願実例が確認されている。韓国では、仮想商品の認定範囲や類否判断に関する指針が作成・施行されている(2022年7月13日ジェトロ知的財産ニュース記事参照)。

NFTと知財保護について

〇著作権法との関係において、ある者が、他者によってすでにネット上に記録されたコンテンツの所在に関する情報(リンク)を、オフチェーン(注5)と呼ばれるブロックチェーン上に記録されないデジタルデータとして記録し、これを自身のNFTにひも付ける行為自体は、著作権侵害にならない可能性がある。一方、NFTマーケットプレイス上でNFTを出品する際などに、他人が著作権を有するコンテンツの複製、アップロードなどをする行為は、著作権侵害となり得る。

〇EUにおいては、商標権による保護について、「NFTによって認証されたダウンロード可能なデジタルファイル」は、商標法上の商品区分のうち第9類による登録の可能性が予想される(EUIPO参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。日本でも、「非代替性トークンで所有が証明された資産性のある画像・動画ファイル」として、第9類での登録例がある。

講演後の質疑応答では、仮想空間における侵害においてどの国や地域の法律が適用されるかなどについて質問が寄せられた。また、商標の指定商品・役務に関するアドバイスを求める声が多く上がった。

ウェビナーの参加者からは、「メタバース関連の法整備について網羅的に説明があった」「知的財産権、不正競争防止法の各法律面での保護について、その考え方を含めて説明があり、大変参考になった」「商標法上、どの指定商品・役務を押さえるべきか参考になった」という声があった。

メタバースやNFTの市場における知財保護は新領域であるため、法制度整備やその運用など、今後もその動向を注視することが重要だ。

(注1)IIPPFは、2002年4月に、模倣品・海賊版などの海外における知的財産権侵害問題の解決に意欲を有する企業・団体によって設立され、90団体・207企業が登録している(2022年9月時点)。このうち、インターネットプロジェクトチームでは、定例会合で各種EC(電子商取引)サイトでの模倣品対策の取り組みなどをメンバー間で共有している。アマゾンなどの海外EC事業者との意見交換会も実施している。IIPPFの概要・メンバー登録申し込みはこちらから。

(注2)さまざまな定義があるが、一般に、アバター(自分の分身)を通じて、行動・体験・協働できるインターネット上の仮想空間を指す。仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の技術と相まって、同じ時間・空間を共有できる臨場感がさまざまな業界から着目されている。

(注3)ブロックチェーン(分散型台帳技術)上で取引・発行される、一般に、偽造困難な唯一無二の鑑定書付きデジタルデータなどと説明される。

(注4)画像意匠は、特許庁によれば「その画像を表示する物品や建築物を特定することなく、画像それ自体を意匠法による保護の客体とする意匠」と定義されている〔特許庁「意匠審査基準」第IV部個別の意匠登録出願 第1章 画像を含む意匠(2022年9月時点外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)〕。機器の操作のために供されるもの(操作画像)または機器がその機能を発揮した結果として表示されるもの(表示画像)の少なくともいずれか一方に該当する画像に限り、意匠法上の意匠と判断される。

(注5)ブロックチェーン上に記録される情報を「オンチェーン」の情報と呼ぶのに対し、ブロックチェーン上には記録されない情報を「オフチェーン」の情報と呼ぶことがある。データ量の削減、取引速度の高速化を通じてトランザクション(処理)の負担を軽減するというもの。

(藤本海香子)

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