欧州医薬品庁、オミクロン株対応ワクチンで重症化リスクに応じた優先接種を呼びかけ

(EU)

ブリュッセル発

2022年09月08日

EUの医薬品規制当局である欧州医薬品庁(EMA)は96日、欧州疾病予防管理センター(ECDC)と共同で、新型コロナウイルスのオミクロン株に対応した2価ワクチンに関する声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。これは、欧州委員会が91日、オミクロン株派生型BA.1に対応した米国ファイザーとドイツ・ビオンテック製のワクチンと、米国モデルナ製のワクチンを、オミクロン株対応型ワクチンとしては初めて承認したことを受けたものだ(2022年9月5日記事参照)。

共同声明によると、これらの2種類のオミクロン株対応型ワクチンは、12歳以上を対象としたブースター接種(3回目以降の接種)用として承認されているが、2022年の秋から冬にかけてのワクチン接種においては、60歳以上の高齢者、免疫不全疾患や基礎疾患のある人、妊婦などを優先すべきとした。また、長期療養施設の入居者やスタッフ、医療従事者も、優先的な接種の対象として検討し得るとした。接種時期については、気温が下がり始め、新たな感染拡大が始まる前、あるいはその初期段階での実施が特に望ましく、インフルエンザワクチンとの同時接種についても検討すべきとした。

なお、現時点では、EMA60歳以上の高齢者と重症化リスクの高い人に対してのみ、2回目のブースター接種(4回目の接種)を勧告している(2022年7月13日記事参照)。

早ければ9月中旬にも、BA.4BA.5に対応したワクチンを承認の見通し

92日に開催されたEMAの記者会見において、EMAのワクチン戦略部門の責任者であるマルコ・カバレリ氏は、オミクロン株派生型BA.4BA.5に対応したワクチンに関して、ファイザー・ビオンテック製については、9月中旬にも承認勧告の判断を出す可能性があると明らかにした。また、モデルナ製については、9月中にも正式な承認申請がなされる見込みだとした。

一方で、EMAは、まだ十分なデータはないものの、承認済みの派生型BA.1に対応したワクチンは、BA.2BA.2.75BA.5などのその他の派生型に対しても一定の効果があるとみている。そのため、どのワクチンを接種するかより、適切な時期にブースター接種を受けることが肝心だと強調した。カバレリ氏は会見で、BA.1に対応したワクチンと比べて、BA.4BA.5に対応したワクチンの有効性がどの程度高いかは分かっておらず、今後流行する派生型の予測も難しいとして、特定のオミクロン株対応型ワクチンを待つのではなく、場合によっては対応型でないワクチンを含め、推奨された時期に利用可能なワクチンを接種することが重要だと述べた。

(吉沼啓介)

(EU)

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