タイ米USTR代表が米シンクタンクで主張、「IPEF閣僚会合は今後の作業の土台に」

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年09月08日

米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は97日、米国シンクタンクのカーネギー国際平和財団が主催した対談形式のイベント外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、バイデン政権の通商政策について議論した。

アジアでは、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)や地域的な包括的経済連携(RCEP)協定をはじめとする大型の自由貿易協定(FTA)が発展している。これらの経済統合の動きに米国が取り残されないために、またアジアで米国が競争するためにバイデン政権の優先課題は何かとの問いに対し、タイ代表は、これまでの貿易自由化は世界経済の富を増やしたと認めつつも、同時に格差も生んだと述べ、従来型のグローバリゼーションの限界を指摘した。新型コロナウイルスの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻に見られる不安定な世界経済情勢にも触れ、従来の効率最優先の企業活動を是正し、貿易ルールを通じて強靭(きょうじん)な経済活動を奨励する必要性を訴えた。

対中政策に関して、タイ代表は「中国との中身のある交渉は可能だ」と答えた。これまでも両国の国益について対話を行い、今後も行う予定と述べた。また、通商政策面から米国が中国に対して求めることとして、中国が米国と同様、開かれた市場に基づいて政府と市場が明確に区別されるように経済運営を行うこと、との考えを示した。一方、中国はそれとは異なる経済政策を追求しているとも指摘。米国は、中国がもたらす課題に対処するために、中国がこれまでとは異なる経済活動を自ら選ぶのを待つだけの従来のアプローチを転換する必要があると主張した。具体的には、対中追加関税などの制裁措置を維持しつつ、米国内に投資し競争力を強化する必要性を訴えた。

また、タイ代表は「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」に米国のほか13カ国が参加表明したことについて、インド太平洋地域のパートナー諸国が米国の同地域への関与を望んでいると評した。「IPEFの革新性は(扱う分野が)従来型の貿易協定を超えている点にある」との見方を提示し、USTRが主導する貿易分野で扱う7つの要素(注)におけるルール作りで協力し、持続可能かつ強靭で包摂的な経済を促進すると語った。989日には、IPEFの閣僚級会合が米国ロサンゼルスで初めて対面形式で開催される中(2022年8月24日記事参照)、同会合の目標を質問されたタイ代表は「閣僚級会合は大変な作業の始まり」としつつ、今後の作業と成果の土台を作るものだと答えた。

(注)USTR3月の官報で示した(i)労働、(ii)環境と気候、(iii)デジタル経済、(iv)農業、(v)透明性と良き規制慣行、(vi)競争政策、(vii)貿易円滑化の7つの要素を指しているとみられる(2022年3月10日記事参照)。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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