ブラジル政府がメルコスール・シンガポールFTAの概要を公開

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、シンガポール)

米州課

2022年08月05日

ブラジル外務省、経済省および農業・畜産・供給省は726日、メルコスール・シンガポール自由貿易協定(FTA)の概要を公開外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同FTA720日、政治合意に至った(2022年7月21日記事参照8月2日記事参照)

ブラジル政府は同FTAの発効により、輸出拡大、シンガポールからの対内直接投資増加、ブラジル・シンガポール間の貿易円滑化や税関協力を見込む、と期待を寄せている。具体的には、メルコスール諸国が競争力を有する産品の輸出拡大、高度な技術を有する機械・機器へのアクセスが容易になり、ブラジル産業セクターの国際競争力向上や関税削減による製品価格の低下、といったメリットを挙げている。

またシンガポールは、201812月に発効し、日本を含む11カ国が加盟する「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)」や、20221月に発効した、ASEAN10カ国、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの15カ国が参加する「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」の加盟国であることから、ブラジル政府は、「アジア諸国の戦略的なパートナとの貿易をより一層深化させる」ことに高い関心を寄せている。

公開された概要文書によれば、物品貿易について、メルコスール側はシンガポールからの輸入品について品目ベースで95.8%、金額ベースで90.8%を、最長15年かけて無関税化する(注1)。品目ベースで25.6%が、協定発効後、関税が即時撤廃される。

税関手続きおよび貿易円滑化については、貿易に関連する通関手続きの透明性確保、円滑化、簡素化を目指すべく、ITのより一層の活用を促す。特徴的なものとしては、腐食性物品(Perishable Goods)が挙げられており、腐食性のある物品に対し適切な優先度を付与して取り扱う。これは、メルコスール諸国からシンガポール向け輸出で農産品の取り扱いが大きいためとみられる。また、AEO制度(注2)の相互認証に向けた2国間協力の可能性についても定められている。

電子商取引の章では、個人情報保護や消費者保護に加えて、データの自由な越境移転や、データ・ローカライゼーション要求の禁止などが規定されている。

サービスおよび投資については、投資に係る紛争や問題解決に対し、ブラジル政府が諸外国と締結する投資協力円滑化協定(ACFI)をモデルとした制度が含まれる。なお、ACFIは、外国直接投資に関する諸問題を把握し、関連各省庁との連携を通じて解決を目指すオンブスマン制度を含むもので、ブラジル政府は、2国間投資協定の代替協定モデルとしてACFIを提唱している。

(注1)関税削減期間、いわゆるステージング期間は、4年(品目ベースで12.5%)、8年(40.9%)、10年(15.1%)、15年(1.7%)、となっている。

(注2AEO制度は、貨物のセキュリティ管理と法令順守の体制が整備された事業者に対して、迅速化・簡素化された税関手続きを利用することを認める仕組み。詳細は税関の公式サイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(辻本希世)

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、シンガポール)

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