メルコスール・シンガポールFTA発効で期待される両国・地域間の貿易拡大

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、シンガポール)

米州課

2022年08月01日

パラグアイ外務省は720日、同日開催されたメルコスール加盟4カ国(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)の外相や経済相で構成する共同市場審議会(CMC)で、メルコスール・シンガポール自由貿易協定(FTA)が政治合意に至ったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(2022721日記事参照)

パラグアイ外務省によれば、両国・地域は今後、条文の法的精査を行い、早期署名および発効を目指す。メルコスールにとり同FTAは、東南アジア諸国と締結する初のFTA。同FTAの発効により、両国・地域間の貿易促進、投資環境の改善、ビジネスにおける予見可能性が高まることなどが期待される。シンガポール貿易産業省(MTI)も721日、同FTAの妥結を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、投資促進、個人や企業間のイノベーションやナレッジ共有の促進につながる、と述べた。MTIによれば、FTAは全19章で構成されている(添付資料表1参照)。

2021年のメルコスール加盟4カ国の対シンガポール輸出は592,900万ドル、輸入は122,700万ドルで、47200万ドルの貿易黒字だった。貿易額全体でみると、両国・地域間のそれはまだ大きくなく、今後拡大の余地がありそうだ。

メルコスールの主要輸出相手国・地域をみると、シンガポールは12位(添付資料表2参照)。同国向け輸出は、輸出額全体のわずか1.8%を占めるにすぎない。輸入では、上位15位までに入っていないため、対シンガポール輸入は、輸入額全体の1.3%以下とみられる(添付資料表3参照)。2021年のメルコスールの対シンガポール輸出を品目別にみると、第27類の「鉱物性燃料および鉱物油」が輸出額全体の82.6%を占め、最も多い(添付資料表4参照)。HSコード6桁ベースでは271019に分類される「その他の石油および歴青油(原油を除く)」が、最も金額が大きい。対シンガポール輸入では、HSコード380891の「殺虫剤」が最も金額が大きい(割合16.0%)(添付資料表5参照)。

なお、メルコスールの対日貿易と比較すると、輸出では、HSコード720293の「フェロニオブ」や、020714の「鶏の肉および食用のくず肉(冷凍したもの)」を、シンガポールや日本に多く輸出している(対日輸出は添付資料表6参照)。ちなみに、メルコスールの対日輸入で最も金額が大きいのは、HSコード870840の「自動車部品、ギヤボックスおよびその部分品」で、輸入額全体の15.7%を占める(対日輸入は添付資料表7参照)。

投資では、近年、シンガポールからブラジル向け投資が増加している(20211011日記事参照)。新型コロナ禍の2020年、シンガポールからブラジル向け投資額は前年比5倍弱となる78,200万ドルに急増した(2021版「世界貿易投資動向シリーズブラジル』」参照PDFファイル(1.7MB))2021年は、さらにそれを上回る82,100万ドルだった。20214月には、シンガポール政府投資公社(GIC)が、ブラジルのフィンテック企業ワレンへ、3億レアル(約78億円、1レアル=約26円)の投資を発表している。

(辻本希世)

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、シンガポール)

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