メルコスールが対外共通関税率引き下げで合意、シンガポールとのFTA交渉も妥結

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、シンガポール)

ブエノスアイレス発

2022年07月21日

アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイのメルコスール加盟4カ国の外相、経済相で構成する共同市場審議会(CMC)が720日に開催され、対外共通関税率の引き下げで合意するとともに、メルコスール・シンガポール自由貿易協定(FTA)の交渉妥結も発表した。

パラグアイ外務省によると、4カ国は対外共通関税率の税率を10%引き下げることで合意した。これまでは、ブラジルが強く主張していた税率引き下げにアルゼンチンとパラグアイは合意していたが、ウルグアイが合意せずにいた。その間、ブラジルは、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)の設立を定めたモンテビデオ条約の第50d)「人、動物または植物の生命または健康の保護」を根拠に、自国単独で2度、関税を引き下げていた。今回、ウルグアイが合意に転じたことを受け、ブラジルを含め、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイでも対外共通関税率が引き下げられることになる。

20194月から20217月までの間に6回の交渉を行っていたシンガポールとのFTA交渉については、今後、早期の署名と発効に向けて、双方が協定文の法的な確認作業を行う。

また、CMCでは、ウルグアイが交渉開始を宣言した中国との2国間FTAをめぐる議論も行われた。アルゼンチンのサンティアゴ・カフィエロ外相はウルグアイを名指しすることは避けたが、「メルコスールのコンセンサスの断絶は害を引き起こす」「アルゼンチンにとってメルコスールの近代化とは、ブロックを崩壊させ、一方的な決定を下すことではなく、統合プロセスを変革、深化させる責任を負うことを意味する」と述べ、「メルコスールの近代化」を主張するウルグアイを批判した。720日付のウルグアイ現地紙「エル・オブセルバドール」電子版によると、ウルグアイのフランシスコ・ブスティージョ外相は「メルコスールは不完全な自由貿易地域」と述べ、加盟国の自由度を高めることを求めた。

CMCのスポークスマンを務めたパラグアイのラウル・カーノ・リッカルディ副外相は会合後の記者会見で「メルコスール加盟国は対外通商交渉を4カ国一体で行わなければならず、単独交渉はできない」とのパラグアイの立場を明らかにした(720日付ウルグアイ現地紙「エル・オブセルバドール」電子版)。また、仮にメルコスールが中国とFTA交渉を行う場合、台湾と国交を結ぶパラグアイも中国とのFTA締結は可能との見解を示した。

(西澤裕介)

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、シンガポール)

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