米下院、インフレ削減法案を可決、バイデン大統領の署名で成立へ

(米国)

ニューヨーク発

2022年08月15日

米国連邦議会下院は812日、民主党単独で審議を進めてきた「インフレ削減法案(H.R.5376)」を220207の賛成多数で可決した。上院では87日に5150で可決済みで、近く、ジョー・バイデン大統領の署名を経て成立する。

法案は、バイデン大統領が20213月と4月に発表した肝いり政策である「米国雇用計画」と「米国家族計画」を基に、民主党内で紆余(うよ)曲折の議論を経てまとめたもの。最終的に、上院民主党のチャック・シューマー院内総務(ニューヨーク州)と、党内保守派のジョー・マンチン議員(ウェストバージニア州)が727日に合意内容を発表した(2022年8月2日記事参照)。合意した法案要旨によると、気候変動対策や公的医療保険の延長など4,370億ドルの歳出と、15%の最低法人税率設定や政府による薬価交渉などメディケア改革実施、内国歳入庁の税務執行強化などによる7,390億ドルの歳入から成り、今後10年間で3,000億ドル以上の財政赤字削減効果があるとしている。

法案は共和党からの支持を得ておらず、上院では議事妨害(フィリバスター)を回避するため、「財政調整措置」(注)を使って民主党議員票のみの可決に持ち込んだ。そのためには、歳出、歳入、財政赤字の変更と無関係な内容が含まれていないか、上院の議事運営専門家の審査を経なければならない。その結果、製薬企業が民間保険市場で薬価を、インフレ幅を超えて引き上げた場合の罰則条項が削除されたが、それ以外はほぼ発表時の内容どおりとなった(CBSニュース86日)。

産業界からはさまざまな反応が出ているが、おおむね否定的なものが多い。クリーンエネルギー関連の投資に対する税額控除が含まれているところには、太陽光発電や風力発電などの業界団体は法案を歓迎しているが、自動車業界は電気自動車(EV)向けの税額控除の条件が厳格だとして遺憾を表明している(2022年8月9日記事参照)。EUや韓国は、EV購入時の消費者向け税額控除の対象車両を北米で最終組み立てが行われたものに限っていることが、WTO協定に違反すると主張している(ロイター812日)。また、薬価引き下げにつながる内容から、米国研究製薬工業協会(PhRMA)は製薬におけるイノベーションを阻害すると懸念を表明。米国商工会議所や全米製造業協会(NAM)といった大型の業界団体も、増税や政府による薬価設定につながるとして、反対を表明している。一方で、民主党の支持母体である労働組合を代表する全米労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)は、法案が労働者にとってエネルギーやヘルスケアのコストを下げ、良質な雇用を生み出すと歓迎している。シエラクラブや全米野生生物連盟(NWR)など環境保護団体も、法案を支持している。

(注)上院では通常、法案可決には議事妨害(フィリバスター)を抑え込むため、クローチャー(討論終結)決議に必要な60票の賛成が必要となる。ただし、歳出・歳入・財政赤字の変更に関する法案については、財政調整措置(リコンシリエーション)を利用し、過半数での採決が可能。賛否が50票同数の場合、議長を務める副大統領の1票で採決となる

(磯部真一)

(米国)

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