パウエル米FRB議長がジャクソンホールで講演、急速な金融引き締め継続を示唆

(米国)

ニューヨーク発

2022年08月29日

米国連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は826日、ジャクソンホール会議(注)で「金融政策と物価安定」をテーマに講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、インフレ抑制が家計や企業にいくらかの痛みをもたらすとしつつも、「物価の安定を取り戻せなければ、さらに大きな痛みを伴うことになる」「物価安定を取り戻すためには、(金融政策において)しばらくの間制約的な政策スタンスを維持する必要がある」と述べ、現状の急速な引き締めペースの継続を示唆した。

講演でパウエル議長は、過去の金融政策の教訓として、人々の高インフレへの期待が実際のインフレ率に影響した1970年代を例に挙げ、インフレ率が上昇すればするほど人々はインフレ率の高止まりを予想するようになり、その予想が賃金や価格決定の中に組み込まれていったと指摘した。その上で、インフレ期待の安定を確認できるまで、強力かつ迅速に金融政策を行っていくと述べた。

また、最近の急速な金融引き締めにより、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の現状の誘導目標は2.25%~2.5%と、景気を刺激も抑制もしない中立金利と呼ばれる水準に達しているが(2022年7月28日記事参照)、パウエル議長は「インフレ率が2%をはるかに超え、労働市場が極めてタイトな現状では、中立金利は(利上げを)立ち止まったり小休止したりする場所ではない」と述べ、今後の連邦公開市場委員会(FOMC)でも利上げを継続する姿勢を鮮明にした。一方で、これまで2会合連続で通常の3倍となる0.75ポイントの引き上げを行っているが、9月会合の引き上げ幅については、「今後入ってくるデータと経済見通し次第」「金融引き締めの進捗に応じて、引き上げペースの減速が適切になる可能性が高い」として、7月会合時での主張を繰り返すにとどめた。

7月の消費者物価の上昇率は前年同月比8.5%と前月の9.1%から大きく減速しており(2022年8月12日記事参照)、パウエル議長講演と同日に発表された7月の個人消費支出物価指数(PCE)も前年同月比6.3%と前月の6.8%から大きく低下している。しかし、パウエル議長は「(7月分の低下だけでは)インフレ率低下が確認できたとするには程遠い」と述べており、9FOMCでの政策金利引き上げ幅の決定に向けて、会合に先立って公表される8月分の消費者物価の結果に注目が集まる。

(注)ジャクソンホール会議は、毎年夏に開かれる、カンザスシティー地区連銀主催の経済政策シンポジウム。例年、ワイオミング州ジャクソンホールで開かれ、各国の中央銀行総裁やエコノミストが参加する(2021年8月30日記事参照)、新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年、2021年とオンライン開催だったが、2022年は3年ぶりの対面開催となった。

(宮野慶太)

(米国)

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