米FRB、政策金利を2会合連続で0.75ポイント引き上げ、中立金利の2.5%到達

(米国)

ニューヨーク発

2022年07月28日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は72627日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の現状の誘導目標1.51.75%から0.75ポイント引き上げ、2.252.5%とすることを決定した(添付資料図参照)。6月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比9.1%とこれまでに続き高い伸びだったことから、前回会合で実質的に予告していた0.50.75ポイントの金利引き上げを上回る、1ポイントの引き上げを予想する声もあったが(2022年7月14日記事参照)、結果的には予告どおりの引き上げ幅となった。なお、今回の決定は参加者12人の全会一致だった。

FRB7月27日に出した声明文の中外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、景気の現状について「このところ消費と生産の指標が鈍化している」と述べ、持ち直してきているとしていたこれまでの評価を弱めた。ロシアによるウクライナへの侵攻については、これまでと同様に、グローバルな経済活動の重荷とした一方で、中国の都市封鎖の影響に関する文言は削除されている。

ジェローム・パウエルFRB議長は、会議後に開いた記者会見の中で、消費や設備投資、住宅投資は弱まってきているとして景気の減速を認めつつも、引き続き雇用は底堅く、高インフレは継続しているとした上で「米国経済は現時点で景気後退には入っていないと思われる」と述べた。今後については「次回会合(9月)でも異例の引き上げ幅が適切となる可能性がある」とした一方、実際には「今後のデータや経済見通し次第」「金融引き締めが進むにつれて利上げペースを緩めることが適切になる可能性が高い」とも述べた。政策金利の誘導目標は長期均衡金利と同程度の2.5%に達したが、前回会合時で示された2022年末時点の政策金利水準の見通しは3.4%で、その水準が変わらなければ、残り3回の会合での引き上げ幅は1ポイント弱となることが予想される。

引き続き金融引き締めを急ぐFRBだが、IMF726日に公表した世界成長率見通しでは、米国の2022年の経済成長率が4月予測時の3.7%から2.3%に引き下げられており、その理由としてインフレ抑制のための急激な利上げ実施が挙げられている。実際に経済指標をみても、弱い数値が相次いでおり、同じく26日に発表された米消費者信頼感指数は3カ月連続で低下している。28日には46月期のGDP速報値が公表されるが、前期に続くマイナス成長の予想もあり、景気後退の懸念がますます高まっている。高インフレが継続する中、実際に数値で表れている経済の減速を前にして、次回9月のFOMCでの利上げ幅がどうなるか、今後の経済動向や市場環境とともに、一層注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

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