7月の米消費者物価、前年同月比8.5%上昇、前月比は横ばいと伸び鈍化

(米国)

ニューヨーク発

2022年08月12日

米国労働省が8月10日に発表した7月の消費者物価指数(CPIPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、前年同月比8.5%上昇し、民間予想の8.7%を下回った。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同5.9%上昇で、民間予想6.1%を下回った。前月比はCPI0.0%の横ばい、コア指数は0.3%上昇で、民間予想のそれぞれ0.2%、0.5%を下回った(添付資料図参照)。

品目別に前年同月比で見ると、ガソリンは44.0%上昇(前月59.9%上昇)と伸びが鈍化し、前月比では7.7%の減少と、インフレ鈍化を大きく牽引した。一方で、食料品は10.9%上昇(前月10.4%上昇)と3カ月連続で2桁台の伸びとなった。特に家庭用食品が13.1%上昇(前月12.2%上昇)と伸びが加速している。財は7.0%上昇と5カ月連続で伸びが鈍化した。うち中古車は6.6%上昇、新車も10.4%上昇とそれぞれ5カ月連続、3カ月連続で鈍化している。サービスは5.5%上昇(前月5.5%上昇)と横ばいだが、物価全体の3割程度のウエートを占める住居費が5.7%上昇(前月5.6%上昇)と引き続き伸びが加速した。なお、航空運賃は27.7%上昇、前月比では7.8%の減少となっている(添付資料表参照)。

民間予想以上に大きく鈍化した7月のCPIだが、内訳を見ると、ガソリンをはじめとしたエネルギー価格の急低下に牽引されており、食料品など一部は引き続き上昇傾向が見られるため、鈍化傾向が今後も続くかどうかは不透明だ。特にウエートが高く、いったん上昇すると低下しにくい住居費は7月のCPIでも上昇傾向が続いている。加えて、85日に発表された7月の雇用統計では、平均時給の上昇傾向が続いており(2022年8月8日記事参照)、賃金コストが反映されるかたちで、サービス価格を中心にCPIは高止まり傾向が続く可能性がある。

7月の堅調な雇用統計にもかかわらず、物価上昇の鈍化が今回明らかとなったことで、市場では連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ姿勢が軟化するとの期待感が広がり、810日のダウ・ジョーンズ工業株価30種平均は前日比535.1ドル高(1.63%高)となり、株式市場などでは安心感が広がった。他方、次回のFRB連邦公開市場委員会(FOMC)は92021日開催が予定されており、CPIや雇用統計はそれまでに8月分が発表予定となっているため、次回のFOMCでの利上げ幅などはこれら8月分の各種統計も見極めて判断されそうだ。

(宮野慶太)

(米国)

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