テスラ・カナダ、「先端工場」設立に向けオンタリオ州でロビー活動活発化

(カナダ)

トロント発

2022年08月16日

米国の電気自動車(EV)メーカー、テスラの子会社テスラ・カナダがオンタリオ州政府に対し、「先端工場」設立許可に向けてロビー活動を活発化させていることが、同州公正取引委員会事務局に提出した同社の文書から明らかになった。当地のEV関連メディアのエレクトリック・オートノミー・カナダが独自情報として85日に報じた。

カナダでは、ロビー活動に関する情報公開が義務付けられており、同社の活動も同州公正取引委員会事務局のウェブサイトで公開されている。718日付で提出された文書には、規制の変更要望に関して9点、制度の変更要望に関して8点の提言が行われているほか、「北米の(他の)高成長製造拠点と比べても競争力のある許認可手続きに要する時間枠を確立することで、オンタリオ州の競争力や資本投資の魅力を高めるべく、政府や政府系機関と連携して『先端工場』設置許可に関する改革の機会を探る。同時に、政府と協力して、オンタリオ州の産業・先端製造業投資の魅力をさらに高めることができるインセンティブプログラムを特定または調整する」と記載されている。

当地の報道では、この提言について、テスラがドイツにギガファクトリーを建設した際に官僚的な手続きから1年近くも悩まされた経験を引き合いに、「テスラが新工場の建設地として選択する際に、迅速な建設許可の取得が地域が与えられる最大のインセンティブであることを明らかにした」と解説している(「エレクトレック」88日)。

「先端工場」という表現について「エレクトリック・オートノミー・カナダ」誌(85日)は、テスラがかつてバッテリー製造から組み立て、リサイクルまで全工程を一貫して1つの屋根の下で行うことを意図したテキサスのギガファクトリーを説明するために使ったことを指摘している。しかし、今回のテスラの提出文書では、「先端工場」という以外、投資計画の具体的な内容は全く触れられていない。テスラは、2021年夏にオンタリオ州トロント郊外のマーカム市にバッテリー製造装置生産工場を開所している(2021年11月26日記事参照)が、カナダではEVの組み立ては行っていない。

オンタリオ州では、ユミコアがEVバッテリー用の正極材とその前駆体材料の生産拠点を建設予定と発表した(2022年7月22日記事参照)ほか、ホンダ(2022年3月17日記事参照)、ゼネラルモーターズ(GM2022年4月6日記事参照)、ステランティス(2022年5月10日記事参照)がEV生産に向けた投資を相次いで発表している。

(飯田洋子)

(カナダ)

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