米エクソンモービル、ロシアの「サハリン1」権益引き渡しで前進も、先行き不透明

(米国、ロシア、日本、インド)

ヒューストン発

2022年08月08日

米国石油大手エクソンモービル(本社:テキサス州アービング)は、同社がオペレーターを務めるロシア極東サハリン州での天然ガス・原油採掘事業「サハリン1」について、保有する30%の権益を「他者(another party)」に引き渡す手続きを進めていることが、同社が83日付で米証券取引委員会(SEC)に提出した書類で明らかになった。

エクソンモービルは202231日、サハリン1の操業を停止するプロセスを開始し、ロシアでの新規投資は今後実施しないと発表していた(2022年3月2日記事参照)。

サハリン1事業にはロシアの石油掘削大手ロスネフチや、米石油大手エクソンモービル、日本の官民が出資するサハリン石油ガス開発(SODECO)、インド石油天然ガス公社(ONGC)などが参画している。

エクソンモービルのSEC提出書類によると、同社のサハリン1撤退により、原油換算で推定15,000万バレルが確認埋蔵量として換算されなくなる。これは2021年末時点のエクソンモービルの保有する世界全体の確認埋蔵量185億バレルの1%未満と説明しており、影響は限定的とみられる。

ロシアのウクライナ侵攻に伴う国際的な制裁措置により、51日から15日までのサハリン1での原油生産量は日量6万バレル強となり、4月平均と比べて3分の1に落ち込んだと報じられるなど、プロジェクトは深刻な打撃を受けている。エクソンモービルの広報担当者はロイターに対し、「サハリン1事業からの撤退は大きく前進した」と述べたという。(「アップストリーム」85日)。

一方で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は85日、サハリン1に関して「非友好国」の企業が株式売却などを行うことを20221231日まで禁止する大統領令に署名した(2022年8月8日記事参照)。米国は「非友好国」に指定されており、エクソンモービルの今後の権益引き渡し手続きに支障をきたすことが懸念される。

米国企業によるロシアでの石油・ガス事業については、米国石油サービス大手ベーカー・ヒューズ(本社:テキサス州ヒューストン)が319日、ロシア事業への新規投資を停止したと発表した。また、同大手シュルンベルジェ(本社:同)とハリバートン(本社:同)も318日にロシア事業への新規投資を停止したと発表した(2022年3月22日記事参照)。さらに、ベーカー・ヒューズは81日、ロシアでの油田サービス事業を現地経営陣に売却する契約に調印したと発表した(2022年8月2日記事参照)。

(沖本憲司)

(米国、ロシア、日本、インド)

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