米エクソンモービル、「サハリン1」権益引き渡しめぐりロシアを提訴の構え

(米国、ロシア、日本、インド)

ヒューストン発

2022年08月31日

米国石油大手エクソンモービル(本社:テキサス州アービング)は830日、同社がオペレーターを務めるロシア極東サハリン州での天然ガス・原油採掘事業「サハリン1」について、撤退が認められなければロシア政府を訴えると通告した。複数のメディアが報じた。

エクソンモービルはサハリン1について、保有する30%の権益を「他者(another party)」に引き渡す手続きを進めていたが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が85日、サハリン1に関して「非友好国」の企業が株式売却などを行うことを20221231日まで禁止する大統領令に署名したことで、エクソンモービルの今後の権益引き渡し手続きに支障をきたすことが懸念されていた(2022年8月8日記事参照)。

エクソンモービルは、株式売却などを禁止するロシアの措置は同社の権利を阻害しており、事業の運営を安全に終了する妨げになっていると述べたという。

同社の広報担当者ケイシー・ノートン氏は、撤退は複雑なプロセスで、当社は事業運営者として従業員の安全や環境、事業実施を守らなければならないと述べている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版830日))。

ロシアのウクライナ侵攻に伴う国際的な制裁措置により、51日から15日までのサハリン1での原油生産量は日量6万バレル強となり、4月平均と比べて3分の1に落ち込んだと報じられるなど、プロジェクトは深刻な打撃を受けている。

サハリン1事業にはエクソンモービルのほか、ロシアの石油掘削大手ロスネフチや日本の官民が出資するサハリン石油ガス開発(SODECO)、インド石油天然ガス公社(ONGC)などが参画している。

米国企業によるロシアでの石油・ガス事業については、米国石油サービス大手ベーカー・ヒューズ(本社:テキサス州ヒューストン)が319日、ロシア事業への新規投資を停止したと発表した。同じくヒューストンに本社のある石油サービス大手シュルンベルジェとハリバートンも318日にロシア事業への新規投資を停止したと発表した(2022年3月22日記事参照)。さらに、ベーカー・ヒューズは81日、ロシアでの油田サービス事業を現地経営陣に売却する契約に調印したと発表した(2022年8月2日記事参照)。

(沖本憲司)

(米国、ロシア、日本、インド)

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