米国企業の2023年人件費予算は前年比4.1%増の見通し、2008年以降最大の伸び、米民間調査
(米国)
米州課
2022年07月20日
米国調査会社のWTWは7月14日、2022年4~5月に実施し、米国企業1,430社から回答を得た人件費予算に関する調査の結果を公表
した。
この調査によると、米国企業は、2023年の人件費として前年比平均4.1%増の予算を組んでいることが分かった。2022年は前年比平均4.0%増だったが、2023年はさらなる増加が見込まれており、伸び率は2008年以降最大となる見通しだ。
米国企業の64%は、2022年の人件費予算を前年から増やし、41%が期中に期初予算を見直した。他方、45%は期初予算を維持している。また、昇給の頻度を高めている企業もあり、36%が昇級の頻度を増やしているか、増やす予定としている。
多くの企業が人件費予算を増やしている背景には、逼迫した労働市場がある。米国労働省によると、2022年6月の労働参加率(注)は前月より0.1ポイント低い62.2%となり、この低水準が賃金の上昇圧力を高めている(2022年7月11日記事参照)。WTWの調査でも、「労働市場の逼迫」を最大の要因に挙げた企業が73%を占め、そのほか「インフレに伴う従業員の賃上げに対する期待」が46%、「業績の向上を見込んでの予算の調整」が28%となった。インフレに関して、6月の消費者物価指数は前年同月と比べて9.1%上昇し、40年半ぶりの伸びを記録した(2022年7月14日記事参照)。ガソリン(59.9%)、家庭用食品(12.2%)、住居費(5.6%)など、生活に不可欠な支出品目が軒並み上昇しており、従業員の企業に対する賃上げ要求は強まっている。
他方、労働市場の改善を見通す米国企業は、少なくない。調査に回答した企業のうち、94%は「今年は人材の獲得に苦労している」と回答したが、2023年の苦労を予測する企業は40%にすぎなかった。同様に、89%が「今年は労働者の定着に苦労している」と回答したが、2023年の苦労を予測する企業は60%弱にとどまった。
米国企業は、労働者の定着を図る目的で、賃金上昇以外の取り組みも強化している。69%は働く場所の柔軟性を高め、59%は以前よりも多様性・公平性・包括性(DEI)を重視している。また、約半数(49%)の企業は、入社支度金(サインオンボーナス)や長期インセンティブ報酬を提供することで、人材の獲得を図っている。インフレなどを理由に人件費の増大が迫られる中、非金銭的な報酬の訴求も重要になっている。
(注)生産年齢人口(16歳以上の人口)に占める労働力人口(就業者+失業者)の割合。
(片岡一生)
(米国)
ビジネス短信 eb6df759a481962c




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