IMF経済見通し、下方修正続く、主要経済が失速

(世界、米国、中国、インド、EU、英国、ウクライナ)

国際経済課

2022年07月28日

IMF726日、最新の「世界経済見通し」(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。2022年の経済成長率(実質GDP伸び率)を3.2%と予測した。同予測は、1月の見通しで4.4%、4月で3.6%と発表されていたが、これを再び下方修正したもの。IMFは、インフレ高進や中国の景気減速、ロシアによるウクライナ侵攻の影響など、4月の見通しで示した下振れリスクが顕在化したと指摘(2022年4月21日記事参照)。2023年の経済見通しも0.7ポイント引き下げ、2.9%を見込む。

米国の2022年の経済成長率見通しは2.3%と、4月から1.4ポイント下方修正された。主要国・地域で最大の引き下げ幅を記録した(添付資料表参照)。上半期に個人消費が伸び悩んだ。ユーロ圏(2.6%)は0.2ポイント引き下げられた。イタリアで観光など産業の改善を見込むが、フランスやドイツ、スペインの経済停滞の影響が上回る。

中国は3.3%と、1.1ポイント下方修正された。上海市の経済活動が4月から約8週間停止するなど、ゼロコロナ政策による影響を加味したもの。不動産部門の不況による販売・投資減も影響している。IMFは、中国の景気減速や封鎖管理がサプライチェーン上の混乱や貿易相手国の製品・サービスへの需要減をもたらすと指摘する。インドは7.4%と0.8ポイント引き下げられた。新興・途上国・地域全体では3.6%と、0.2ポイントの下方修正にとどまった。

インフレ率については、2022年が8.3%、2023年が5.7%と予測され、ともに0.9ポイントの上方修正となる。2022年は、英国とユーロ圏の上昇幅が大きい。インフレに伴い、欧州中央銀行(ECB)は727日に政策金利を0.5ポイント引き上げ(2022年7月22日記事参照)、米国連邦準備制度理事会(FRB)も日に0.75ポイントの利上げを発表している(2022年7月28日記事参照)。2023年は、こうした金融引き締めやエネルギー価格の影響が押し下げに寄与するとしている。

IMFは、2024年末にインフレ率が新型コロナ前の水準に戻ると見込むが、ウクライナ紛争が食料やエネルギー価格にさらなる供給上の問題を及ぼす場合、インフレと景気後退が同時発生するスタグフレーションが起こる可能性を示唆している。

(藪恭兵)

(世界、米国、中国、インド、EU、英国、ウクライナ)

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