家電などの輸入に対する対中追加関税の影響を分析、米業界団体調査

(米国、中国、ベトナム、台湾)

米州課

2022年07月25日

全米民生技術協会(CTA、注)は7月19日、通商法301条に基づく対中追加関税が、家電などの消費者向け技術製品の輸入にもたらした影響を分析したレポートを発表した。レポートによると、トランプ前政権下の2018年7月に301条関税のリスト1が発動されたのち、2021年12月までの間、消費者向け技術製品の中国からの輸入時に支払われた追加関税の累計金額は約320億ドルだったとしている。

当該製品が対中追加関税の対象品目であるかどうかは、追加関税発動後の中国からの輸入金額に影響を及ぼしている。課税対象となった品目の輸入額は、2017年から2021年までの間に39%減少したのに対し、課税対象とならなかった品目の輸入額は35%増加した。また、課税対象となった品目についても、2020年半ばから輸入額は増加していることから、301条関税はサプライチェーンの「脱中国化」の動機としての機能は同時期より失われており、関税を要因とした今後の輸入量減少も考えられにくいと分析している。

課税対象品目の中国からの輸入額に一時的な減少がみられた一方、ベトナムや台湾といった中国以外の国・地域からの輸入額が増加した点も、影響の1つとして挙げられている。追加関税が発動されて以降、対中追加関税の対象品目の輸入額は2017年から2021年にかけて500億ドル減少した一方、同期間における同品目の他国からの輸入額は1,170億ドル増加している。特に台湾からの輸入額は同期間に約230億ドル(2.5倍)、ベトナムからの輸入額は約185億ドル(3.4倍)増加しており、特に恩恵を受けた国・地域として挙げられている。

また、対中追加関税の発動は、対象製品の米国内での生産や雇用の増加といった効果をもたらさなかったとしている。例えば、コンピュータおよび電子機器は、追加関税の対象となった品目の2017年における総輸入額が非常に大きかった部門だった。しかし、同部門の米国産製品の出荷台数は、追加関税発動前後で増加がみられなかったことを根拠として挙げている。

以上の分析を踏まえ、CTAは米国の政策立案者に向けて、以下の3点を要請している。

  1. 消費者向け技術製品の関税を撤廃すること。これにより、インフレを緩和し、コストを下げ米国経済の革新力を開放する。
  2. 原材料や部品への関税を撤廃すること。これにより、国内の雇用とテクノロジー製品の製造を活性化させる。
  3. ベトナム、台湾、マレーシア、タイと直ちに新規の貿易協定を締結、あるいは既存の協定を拡大すること。これにより、米国内の製造業への投資をより魅力的なものとする。

対中追加関税については、米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表が2022年6月22日、「対中追加関税は重要な手段」と述べ、見直しに否定的な見解を示した一方(2022年6月24日記事参照)、ジャネット・イエレン財務長官はその再構成を検討していると述べるなど、政権内でも一枚岩でないことがうかがえる(2022年6月14日記事参照)。

(注)家電をはじめとする民生機器テクノロジー部門における米国の業界団体。2015年11月に、それまでの全米家電協会(CEA)から名称を変更した。

(滝本慎一郎)

(米国、中国、ベトナム、台湾)

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