人権問題と産業競争力強化に注目、ジェトロ月例レポート(2022年6月)

(米国、中国)

米州課

2022年07月20日

ジェトロは719日、米国の対中国関連政策についてまとめた6月分の月例レポートを公表した。このレポートは、日本企業が米中関係に関する米国の動向を把握できるよう、20217月から毎月分を作成して特集ページに連載している。

通商分野で注目される動きとしては、中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品の輸入を原則禁止する法律「ウイグル強制労働防止法(H.R. 6256UFLPA)」に基づく輸入禁止措置が、米国時間の621日から有効となった点が挙げられる(2022年6月21日記事参照)。新疆ウイグル自治区での人権侵害はトランプ前政権下で強く問題視されるようになり、人権を理由にしたサプライチェーン規制の強化方針はバイデン現政権下でも引き継がれている。同法の施行に際しては、その管轄機関である国土安全保障省の税関・国境警備局(CBP)のみならず、国務省や商務省といった他の行政機関や連邦議会、産業団体など、各方面から厳格な執行を期待するメッセージが発表されており、中国の人権問題に対する米国内での関心の高さを反映するものとなっている。

また、中国との長期的な競争を念頭に、米国の産業競争力を強化することを主な目的とした「超党派イノベーション法案(BIA)」については、上下両院案の擦り合わせのための両院合同委員会での調整が5月から始まるも進展に乏しく、議会に対して迅速な審議を求める働き掛けがみられた。615日に米国企業123社が連邦議会に対し、同法案の成立に向けて緊急に行動することを要請する書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を送付しており、半導体産業協会(SIA)も同日付でこの書簡への支持を表明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。また622日には、主要自動車メーカーおよび部品メーカーなど26社が米国議会に対し、国内の半導体生産能力とサプライチェーンの強化に向けた資金提供を迅速に進めるよう求める書簡を提出した(2022年6月24日記事参照)。

中国の対ロシア支援への牽制については、バイデン政権のハイレベルでの目立った動きは見られなかった一方、商務省産業安全保障局(BIS)が628日に、ロシアを支援した中国企業をエンティティ・リストに掲載するなど、既存法令に基づき行政府レベルでの措置は実行されている。

米国の対中政策・措置や米国側から見た米中関係の動向を、行政府、連邦議会、産業界、学会に分けて解説する本レポートは、こちらの特集ページからさかのぼって閲覧が可能。米中関係に関する中国の動向も確認できる。

(滝本慎一郎)

(米国、中国)

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