TikTok、「米国の利用者データは中国共産党に提供しない」、米連邦共和党上院議員の合同書簡へ回答

(米国、中国)

米州課

2022年07月04日

動画共有アプリTikTokの周受資・最高経営責任者(CEO)は6月30日、米国連邦上院議会の共和党議員9人に対して書簡を提出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。共和党議員9人は6月27日、TikTokの周CEOに対して、中国にいる同社の従業員が米国の利用者データを閲覧していたという、米国のオンラインメディア「バズフィード」による6月17日の報道について事実関係を問う書簡を送付PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)していた。また、連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員は6月28日に、アップルとグーグルにアプリストアからTikTokを削除するよう要請する書簡を送付した旨を自身のツイッター上で明らかにしていた(2022年7月1日記事参照)。

周CEOは連邦上院議員の質問のうち、米国の利用者データの閲覧可否について、「中国を含む米国外にいる従業員は、米国を拠点とするセキュリティチームが監督する厳重なサイバーセキュリティー対策と承認手続きに従って、米国の利用者データを閲覧することができる。必要な承認のレベルは、データの機密性によって異なる」と記した。これは、中国にいる従業員であっても、米国の利用者データを閲覧できる一方、そのためには信頼性が確保された社内の承認プロセスを経る必要があると主張し、当該データの閲覧はコンプライアンス上、問題ないとの立場を示したかたちだ。また、「米国の利用者データは、米国政府とともに開発中のプロトコルに従い、許可された人物のみにアクセスを制限して、オラクルのクラウドに保存される」と述べ、データの保存場所をオラクルに変更するとした6月17日の発表に沿う方針を明示した。

さらに、中国共産党に対する米国の利用者データの提供歴について、「われわれは、中国共産党から米国の利用者データの提出を求められたことも、提供したこともない。たとえ要請があっても、提供することはない」と応じた。「中国政府は、(TikTokの親会社である)バイトダンスに出資、取締役会に参加、あるいはそのほか指導的立場に人材を提供しているか」との質問には、「バイトダンスの投資家の大半は、世界的な機関投資家で、中国政府はTikTokと関連するバイトダンスの事業体に取締役を任命するなどの、特定の権利を有していない」などと回答した。

米国内でのTikTokの利用については、ドナルド・トランプ前大統領が2020年8月6日に、親会社バイトダンスとの取引を禁止する大統領令に署名(2020年8月7日記事参照)したが、ジョー・バイデン大統領が翌2021年6月9日に、同大統領令を撤回する大統領令を発令した(2021年6月15日記事参照)。他方、共和党内を中心に、依然TikTokの安全性に懐疑的な連邦議員は少なくないとみられる。

(片岡一生)

(米国、中国)

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