労働時間制度と賃金体系を優先課題とした労働市場改革の方向性を発表
(韓国)
ソウル発
2022年07月01日
韓国雇用労働部のイ・ジョンシク長官は6月23日、新政権の労働市場改革推進の方向性に関するブリーフィングを行った。労働市場改革は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の「新政権の経済政策方向」においても取り組むべき課題として取り上げられている(2022年6月21日記事、2022年6月24日記事参照)。
イ長官は、労働時間制度と賃金体系の改編を喫緊の課題として取り上げた。労働時間制度は、2018年に勤労基準法が改正され、労働時間の上限は週52時間に定めた(注1)。以降、制度の定着に努めてきた一方、労働時間の「短縮」と企業や業種の経営環境の「多様化」の間でバランスを取るべく柔軟に対応すべきとの要望が強い。これを勘案し、(1)週単位での管理としている労働時間の上限を月単位での管理にするなど、合理的な総量管理の期間に関する方案、(2)選択的勤務時間制(注2)について、研究開発分野のみ精算期間を3カ月としている現行制度を、その他職種にも拡大すること、などを検討する。これにより、基本的な労働時間の上限は現行制度を維持しつつも、繁忙期の業務量の増加にも柔軟に対応する制度を模索する。
賃金体系については、韓国では一般的に年功色の強い賃金体系となっていることから(注3)、低成長かつ転職が頻繁に起こる時代に沿った賃金体系とすべく、(1)終身雇用と年功序列の賃金体系の見直し、(2)賃金ピーク制(注4)や再雇用などの合理的な制度改善を検討する。
同部では、7月から10月にかけての4カ月間に、関係する専門家とともに「未来の労働市場研究会」を開催し、その後具体的な立法課題と政策課題を抽出するとした。
(注1)改正前の勤労基準法では、労働時間の上限が週68時間だった。
(注2)就業規則により、業務の開始および終了の時刻を労働者の決定に委ねることとし、労使双方で精算期間内を平均して1週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲で法定労働時間を超えて勤務させることができる制度。韓国の場合、原則的な精算期間の上限は1カ月。
(注3)韓国の場合、勤続1年未満の労働者と勤続30年以上の労働者との賃金格差は2.87倍で、日本の2.27倍より格差が大きいとしている。
(注4)雇用または定年延長を保障する代わりに、一定の年齢以降は勤務時間を調整するなどして賃金を引き下げる制度。公共機関や大企業で多く取り入れられているが、一部の大企業の労働組合が制度廃止を求めている。
(当間正明)
(韓国)
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