5月のASEAN加盟国のインフレ率、タイとラオスで大幅上昇

(ASEAN、シンガポール、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ラオス)

アジア大洋州課

2022年07月14日

ASEAN加盟国のインフレが加速している。5月の消費者物価指数(CPI)の上昇率(前年同月比)をアジア開発銀行(ADB)や、中央銀行、各国統計局などの資料で見ると、タイで7.1%、ラオスで12.8%と、いずれも前月から大幅に上昇した。フィリピン、シンガポールも5%台と高い水準になった(添付資料表参照)。

タイは、食料やエネルギーの価格上昇が影響し、約14年ぶりに高水準となった。商務省はエネルギー価格の上昇について、世界的な石油価格の上昇を受けた液化石油ガス(LPG)料金や電気料金の値上げによるものと説明した。

ラオスでは、石油価格の上昇に加え、現地通貨キープ安の進行によって物価上昇が加速しており、5月のインフレ率は過去15年で最も高くなった。国民生活や企業活動にも大きな影響を与えており、特に首都ビエンチャンではガソリン不足が社会問題となっている。現地の日系企業では、従業員からの賃金引き上げ要求に対応して、通勤手当を上乗せするなどの動きもみられる(2022615日記事参照)。

フィリピンは前月から0.5ポイント上昇して 5.4%となり、201812月以降最も高くなった(2022627日記事参照)。中央銀行は623日、インフレ率見通しの上振れリスクが高い状況に対応し、政策金利を年2.25%から年2.50%に引き上げることを決定した。

シンガポールは5.6%と、3カ月連続で5%台となった。5%台の水準で推移するのは約10年ぶり。財務省は621日、インフレの影響を受けている低所得者層を重点的に支援するパッケージを発表した(2022年6月23日記事参照)。

インドネシアとベトナムは、他国と比べてインフレ率は低く抑えられているが、20223月以降、23%台で徐々に上昇している(添付資料図参照)。マレーシアも同様で、20221月から4月まで2.22.3%と横ばいで推移していたが、5月は2.8%に上昇した。マレーシア中央銀行は76日、インフレ圧力の高まりを受けて、政策金利を年2.00%から年2.25%に引き上げることを決定した(2022年7月8日記事参照)。マレーシアでは5月に4年ぶりの利上げが行われたが(2022年5月13日記事参照)、2会合連続で引き上げとなった。

(山口あづ希)

(ASEAN、シンガポール、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ラオス)

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