シンガポール財務省、インフレ進行で総額15億Sドルの法人・個人向け支援パッケージ

(シンガポール)

シンガポール発

2022年06月23日

シンガポールのローレンス・ウォン副首相兼財務相は6月21日、インフレのさらなる進行を受け、総額15億シンガポール・ドル(約1,470億円、Sドル、1Sドル=約98 円)の法人・個人向け支援パッケージを発表した。財務省は2月18日発表の2022年度政府予算で、個人、中小企業に対する物価上昇の影響を軽減する支援策を盛り込んでいた。しかし、その後、電力価格や食品価格などが一段と高騰しているのを受け、今回の追加支援に踏み切った。

ウォン副首相は会見で「世界とシンガポール国内のインフレ状況は最終的には安定化するものの、今後数カ月、物価上昇が続くことが予想される」と指摘。「特にエネルギー価格は2022年内、上昇が続く見通しだ」との見方を示した。今回のパッケージでは、電力価格高騰の支援として、食品製造や飲食サービス、小売り部門の地場中小企業向けに、省エネ関連機器設置費用の70%を支援する「省エネ補助金」を導入した。また、国民の全世帯を対象に光熱費を100Sドル分相殺する「一般世帯光熱費クレジット」も盛り込んだ。

このほか、今回のパッケージで法人向け支援として、貿易産業省管轄下の産業・貿易振興機関エンタープライズ・シンガポール(ESG)が管轄する支援スキーム「法人金融スキーム」の貿易ローンと中小企業運転資金のローンの上限額を引き上げた。また、月給3,000Sドル以下の国民(永住権者を含む)を雇用する企業を対象に、給与引き上げ幅の一部を政府が補助する「累進給与補助金制度(PWCS)」について、政府の負担額を一時的に引き上げる。今回の法人・個人向け支援パッケージの詳細は添付資料を参照。

今回のパッケージで政府は、物価高騰で打撃を受けた特に低所得者層に対して重点的に支援している。なお、ウォン副首相は財源について、2021年度の財政収支が予想よりも良かったとして、過去の準備金を取り崩す必要はないと説明した。同副首相は「状況は極めて流動的で、政府は引き続き状況を注視する。必要であれば政府のプログラムや対策を調整する」と述べた。

(本田智津絵)

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