造船関連企業のストライキが長期化、政府が対話の再開に向け談話を発表

(韓国)

ソウル発

2022年07月20日

大宇造船海洋の下請け会社の労働者約300人が、賃金の引き上げや賞与の支給、労働組合活動の保証を求め、62日からストライキを開始し、22日からドックなどを占拠している。ストライキに対しては、地域住民が反対して「人間の鎖」を結ぶなど、労使関係に加え、地域住民に影響を及ぼす事態に発展している。

韓国政府は714日、韓悳洙(ハン・ドクス)首相主宰の「国政懸案点検調整会議」において、「ここ数年厳しい状況が続いていた造船業はようやく回復の兆しが見えてきた中、このような時期に生産に支障が出ていることは非常に残念で、経済の回復に冷や水を浴びせかねない状況だ」と述べた。この上で、労働者に対しては、早急に労使の対話に戻るように勧めつつも、「違法な行為が続けば、法と原則に即した厳正な対応が進めるしかない」との姿勢を表明した。

さらに同日付で、李正植(イ・ジョンシク)雇用労働部長官は談話を発表し、労働三権は保障されなければならないとしつつも、今回のストライキにより、造船元請け会社の従業員約8,000人、下請け会社の従業員約1万人に対し被害が及んでいる点、ドックの占拠が事故につながる恐れがある点などを考慮し、「対話による問題解決」を促した。

「韓国経済」(711付)は、ストライキによる経済的な影響として、「ストライキが続く場合、1日当たり260億ウォン(約273,000万円、1ウォン=約0.105円)の売り上げ、60億ウォンの固定費を喪失する」との大宇造船海洋の役職員によるコメントを紹介している。さらに、労働政策の観点からは、貨物連帯によるストライキ(2022年6月14日記事2022年6月15日記事参照)の際、政府は労働者側に譲歩したとの見方が出ている中、今回のストライキへの対応が尹政権の労働改革への意思を見通す上での「試験台」になると言及している。

(当間正明)

(韓国)

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