GHG排出上位5カ国、25年間で世界に6兆ドルの経済的損失、米大学研究論文

(米国、中国、ロシア、インド、ブラジル)

米州課

2022年07月26日

世界各国が排出した温室効果ガス(GHG)について、他国への経済的影響を定量的に分析した論文が発表された。学術誌「クライメート・チェンジ(Climate Change)」が712日に発表した米国ダートマス大学の研究論文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、世界で最も多くGHGを排出している5カ国は米国、中国、ロシア、インド、ブラジルで、この5カ国は温暖化を通じて19902014年の25年間で計6兆ドルの経済的損失を引き起こしたとしている。

中でも、排出量上位2カ国の米国と中国はそれぞれ18,000億ドル以上の経済的損失をもたらしたとしている。ロシア、インド、ブラジルによる経済的損失もそれぞれ5,000億ドルを超えており、5カ国による損失の累計は同25年間の世界GDPの約11%に相当するという。

論文の筆頭著者クリストファー・キャラハン氏は、この研究は気候変動を理由とする損害賠償請求に科学的根拠があるという答えを提供しており、「われわれは、歴史的な気温(の変化)による他国の所得変化について、各国の責任を定量化した」と述べた。気温の上昇は、農業産出額や工業産出額の減少、労働生産性の低下などさまざまなかたちで経済的損失を引き起こすと論じている。また、経済的損失を被った国々は、世界平均よりも温暖で貧しく、一般的に熱帯地域や南半球に集中しており、温暖化による影響の分布は非常に偏っているとしている。

GHGの主要排出国である米国では、バイデン政権が発足当初から、気候変動を最重要課題の1つに位置付けてきた。最近の動向として、ジョー・バイデン大統領は720日に新たな気候変動対策を発表し、異常気象や災害への対応、洋上風力発電のさらなる普及などに注力することを明らかにした(2022年7月22日記事参照)。同大統領は数週間以内に大統領権限を行使し、議会の議論を待たずにさらなる追加対策を講じるとも示しており、気候変動問題の解決を非常に重視していることがうかがえる。他方、バイデン政権の気候変動対策に対する国民の評価は支持政党別で二分しており、GHG排出量が最も多い交通・輸送部門について、共和党支持者の82%は「ガソリン車の段階的廃止」に反対している(2022年7月20日記事参照)。

(片岡一生)

(米国、中国、ロシア、インド、ブラジル)

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