連邦政府、国による動物福祉ラベルの義務化に関する概要発表

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2022年06月15日

ドイツ連邦食料・農業省は6月7日、国による公的かつ義務的な動物福祉(アニマル・ウェルフェア)に関する畜産ラベル制度導入に向け、制度の概要外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

政府は既に2021年の連立協定書(2021年11月26日記事参照)で、畜産業の改革実施を掲げていた。今回の発表の総論として、ドイツの畜産業を未来にふさわしいものにするという目的の下、持続可能な畜産業は動物福祉や気候保護の側面をより考慮し、消費者にとって透明性があるもので、畜産農家に長期的な経済的見通しを提供すべきとしている。具体的には、持続可能な畜産業に向けた改革は(1)飼養管理の方法を表す畜産ラベルの義務化、(2)畜産農家の長期的な見通しを含めた畜舎の改築への支援、(3)動物保護法におけるより良い規制、(4)建築・認可に関する法律の改正の4つの柱からなるとした。その第一歩として、国による畜産ラベル制度を創設する。

動物福祉を重視する消費者は近年増加傾向にあり、信頼できる飼育方法についての情報を提供するラベルの義務化を求めている(2021年5月31日記事参照)。ドイツでは現在、民間団体の動物福祉ラベル(2022年1月21日記事参照)が存在している一方、現時点では法的な義務はない。

今回の政府発表によると、畜産ラベルは家畜の飼養管理の方法を表すものとし、表示が義務付けられるのは、家畜がドイツ国内で飼養され、その畜産品がドイツ国内の最終消費者に販売される場合だ。販売チャネルは小売店舗、オンライン販売、市場など全ての経路が対象。また、飼養管理の方法は5段階に分類される(添付資料表参照)。飼養管理の方法を表示すべき期間は生産期間で、例えば食肉の場合は肥育期間だ。所管行政庁が畜産ラベルに関する法律の施行状況を管理し、違反には過料が科される。

畜産ラベルの義務化は段階的に進められる。まずは、食料品店、精肉店、オンライン販売やその他の販売先で豚の精肉(冷凍品を含む)を対象に開始される予定。現在の連立政権の任期中(2025年秋まで)には、外食、加工食品、牛肉、牛乳、鶏肉へも順次拡大する予定。食料・農業省は具体的なスケジュールを法案審議の開始時に発表する見込みだ。

また、政府は動物福祉の向上のために畜舎を改築する畜産農家を長期的に支援する予定で、連邦予算では、第一段階として10億ユーロを確保している。その後の支援については現在調整中。

経済団体からは歓迎する声が上がる一方、計画の粗さを批判する声も出ている。

なお、法案は2022年秋にまず連邦参議院(上院)へ送付され、続いて年末には連邦議会(下院)で審議開始の見込み。併行して、法案は欧州委員会に通知される。

(ベアナデット・マイヤー)

(ドイツ)

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