欧州委員会、ポーランドの復興レジリエンス計画承認

(ポーランド、EU)

ワルシャワ発

2022年06月10日

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は6月2日、ポーランドの首都ワルシャワを訪問し、アンジェイ・ドゥダ大統領、マテウシュ・モラビエツキ首相と会談外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これは前日1日に欧州委による同国の復興レジリエンス計画(復興計画)の審査が完了した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますことを受けたもの。同国の復興計画は239億ユーロの補助金と115億ユーロの融資からなり、EUの復興基金の中核予算「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」から拠出される。フォン・デア・ライエン委員長は会談後の記者会見で、ロシアによるウクライナ侵攻の影響を大きく受けているEU加盟国のポーランドとの連帯を強調した。

ポーランドは2021年5月に復興計画を欧州委へ提出していた(2021年5月17日記事参照)が「法の支配」をめぐるポーランドとEUの対立(2021年10月12日記事2022年2月18日記事参照)などによって、審査・承認手続きが大幅に遅れていた(2021年9月17日記事参照)。

ただし、今後のRRFの支払い条件として、欧州委はポーランドに対して「法の支配」の順守などの達成を求めている。具体的には、最高裁判所に設置されている裁判官の懲戒機関である規律部を廃止し、法律に基づいて独立した公平な新たな機関を設置することや、裁判官が規律部による不当な処分を取り消すこと、規律部の判決で影響を受けた裁判官に対し新たな機関でその判決を再審査してもらう権利を付与することだ。フォン・デア・ライエン委員長は会見で、これらが達成された場合にのみRRFの予算執行を実施するとし、ポーランドの「法の支配」をめぐる改革はまだ道半ばだと指摘した。

モラビエツキ首相は今回の審査完了を受けて、「復興基金はポーランド経済を強化し、新たな軌道に乗せることになるだろう。この資金は、持続可能な開発や環境、デジタル化、教育、保健分野などに投資される予定で、全ての国民がポジティブな効果を実感できるはずだ」とコメント。なお、ポーランド政府はRRFの予算執行より前に復興計画に基づく投資の実施を促すために、ポーランド開発基金(PFR)から事前に融資を受けられるようにしている。

(今西遼香、ニーナ・ルッベ)

(ポーランド、EU)

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