世界銀行、2022年の東アジア・大洋州新興国・地域の成長率予測を4.4%に下方修正

(ASEAN、中国、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、カンボジア、ラオス、ミャンマー)

アジア大洋州課

2022年06月24日

世界銀行は6月7日発表の「世界経済見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、2022年の東アジア・大洋州の新興国・地域の実質GDP成長率を前回発表(2022年1月19日記事参照)から0.7ポイント下方修正し、4.4%になると予測とした(添付資料表参照)。2023年については、前回発表した5.2%とする予測を据え置いた。なお、今回の発表では、景気後退と高インフレの同時進行、長期化を懸念し、世界全体の経済見通しを引き下げ、2022年2.9%、2023年3.0%とした(2022年6月9日記事参照)。

世界銀行は、東アジア・大洋州の新興国・地域の2022年の経済見通しを引き下げた要因について、中国経済の減速がその他の地域の経済回復を上回るためと説明。2022年の中国の経済成長率予測を5.1%から4.3%に引き下げた。中国では、国内需要回復に向けた財政・金融政策や不動産セクターの規制緩和がプラス要因の一方、新型コロナウイルス感染拡大による都市封鎖(ロックダウン)、予想を下回る世界需要と企業の景況感、消費者心理の冷え込みがマイナス要因となったと指摘した。一方、中国を除いた同地域の2022年の成長率は、ロシアのウクライナ侵攻による経済への影響が徐々に薄れると想定した場合、国内需要の回復により4.8%になると予測した。

東南アジア各国の2022年の経済成長率をみると、ベトナムは新型コロナ関連の規制撤廃により経済活動が活性化し、5.8%と最も高い成長率になると予測。フィリピン(5.7%)、マレーシア(5.5%)、インドネシア(5.1%)についても、5%を超える高い成長率になると予測した。特にインドネシアは、資源などコモディティーの輸出による国際収支の回復を指摘した。一方、コモディティーの輸入依存度の高いタイや太平洋島しょ国では、世界的な原材料などの価格上昇などが経済に悪影響を及ぼすとした。中でもタイは2022年に2.9%、2023年に4.3%となり、今後2年かけて徐々に経済が回復すると予測した。

世界銀行は東アジア・大洋州の新興国・地域の見通しについて、下振れリスクが優勢と指摘している。その要因として、(1)パンデミック再発とそれに伴う規制がサプライチェーンの混乱を引き起こす可能性、(2)ロシアによるウクライナ侵攻の長期化による世界的な景気減速、輸出低迷、食料・燃料不足とこれに起因する生産中断が経済の回復ペースを鈍らせる可能性、(3)主要な金融市場の引き締めが現地通貨安と高インフレを招き、特に対外債務残高が多い国々の財政を圧迫していることなどを挙げた。

(山口あづ希)

(ASEAN、中国、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、カンボジア、ラオス、ミャンマー)

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