中銀、2022年GDP成長率予測を4.1%に下方修正、観光好調がウクライナ影響を緩和

(スペイン)

マドリード発

2022年06月20日

スペイン中央銀行は6月10日に発表したマクロ経済予測で、2022年と2023年の実質GDP成長率見通しを前回4月の予測から再び下方修正外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、それぞれ4.1%(0.4ポイント減)、2.8%(0.1ポイント減)とした(添付資料表参照)。2021年12月以降、3回連続の下方修正となった(2022年4月12日記事参照)。4月末以降、ウクライナ情勢の影響を受けた2022年のGDP成長率見通しの下方修正が相次いでおり、スペイン政府は4.3%、欧州委員会は4.0%と予測している。

中銀による今回の下方修正の主な要因は、第1四半期(1~3月)のGDP成長率が前期比0.3%と、当初の予想以上に低調だったことが反映されたため。第1四半期は新型コロナウイルスのオミクロン株感染波による経済活動の鈍化と、ロシアのウクライナ侵攻によるインフレのさらなる加速により、個人消費が前期比マイナス3.7%の冷え込みを見せた。

一方、第2四半期(4~6月)以降は新型コロナウイルス関連の規制がほぼ完全に解除されたことで、観光関連のサービス業(宿泊・飲食、輸送、娯楽など)の売り上げが力強く伸び、インバウンド観光も5月以降、回復が顕著となっている。設備投資や住宅投資も好調で、EU復興基金の執行による経済効果(2022年全体で1.5ポイント強のGDP押し上げ)も期待できるため、中銀は、これらの要因が年内の景気回復の原動力となり、ウクライナ情勢の影響をおおむね相殺できるとみている。

発電用ガス価格介入により短期的にインフレ緩和

2022年の消費者物価指数(CPI)上昇率は7.2%と、前回予測から0.3ポイント引き下げられた。これは、6月から施行された発電用ガス価格への上限価格導入(2022年6月14日記事参照)により、消費者の電気料金や企業の電力コストが構造的に引き下げられるため。

しかし、エネルギー・食料品を除いたコアCPIも上昇基調にあり、賃金上昇圧力も高いことから、中銀はさらなる物価・賃金上昇のスパイラルが起こる可能性があるとしている。また、中期的な景気下振れリスクとして、ウクライナ情勢が長期化した場合のインフレやサプライチェーン混乱の継続、世界的な金融引き締めによる資金調達環境の悪化を挙げている。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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