米財務省、米国人の市場でのロシア債券・株式購入を禁止

(米国、ロシア)

ニューヨーク発

2022年06月09日

米国財務省は6月6日、米国人の市場でのロシア債券・株式購入禁止を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

米政府はロシア政府などとの取引禁止など(2022年3月1日記事参照)、多くの制裁を科しているが、今回これまでの措置に関するガイダンスを出したことで、制裁内容を明確化・厳格化したかたちとなった。ガイダンスによると、購入を禁止するのは、ロシア国債をはじめ、ロシアの事業体が発行した全ての債券と株式。ただし、米国人が現在保有する対象債券・株式については、米国人以外の者への売却は許容するとともに、保有継続も認める。また、ロシア債券・株式を含む米国ファンド運用商品についても、それらが全体に占める割合が低い場合は、引き続き購入できるとしている。

厳しい金融制裁を受けるロシアだが、ウクライナとの戦争の終結後に債券価格が回復することを見越して、ロシア企業の債券や株式を購入する動きが一部の投資家にあることが指摘されている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版6月7日)。民主党左派の有力議員であるエリザベス・ウォレン上院議員(マサチューセッツ州)はロシアに対する制裁を弱めているとして、ロシア債などを取引しているJPモルガンやゴールドマンサックスといった大手銀行を批判するなど、こうした一連の問題に対する指摘が高まっていた。今回の措置により、翌7日の市場ではロシア債の取引はほぼ停止となった。また、ガイダンス発表が6日夜だったこともあり、ロシア債を保有する投資銀行やファンドは規制内容の把握といった対応に追われたもようだ(ブルームバーグ6月7日)。

ロシア国債については、4月4日が支払い期限のドル建てロシア国債について、支払い遅延分の利払いがなかったとして一部の投資家がデフォルトを訴え、クレジットデリバティブ決定委員会は6月1日、クレジットイベントに該当するとしてロシア国債はデフォルト相当と判断している。財務省は5月25日に米国でドル建てロシア国債の元利払いが受け取れる特例措置を終了させたことから、次回の6月23日の利払い対応がデフォルト認定の焦点と見られていたが(2022年5月26日記事参照)、予想よりも早まったかたちだ。デフォルト認定による市場での目立った混乱はまだみられないが、世界最大の米国市場へのアクセスがほぼ絶たれたことで、ロシアの資金調達は今後ますます厳しくなっていくことが予想される。

(宮野慶太)

(米国、ロシア)

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