米西海岸港湾の労使交渉、労使双方が7月以降の交渉継続、混乱回避の意向表明

(米国)

ロサンゼルス発

2022年06月15日

米国西海岸の港湾で太平洋海事協会(PMA)と国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の失効が7月1日に迫る中、PMAとILWUが7月以降も交渉を継続するという共同声明を発表した、と複数のメディアが報じている。共同声明では、PMAとILWUのいずれの当事者も「ストライキやロックアウトの準備はしていない」と述べており、当面、混乱は回避される見通しだ。

2000年以降の労使交渉の経過をみると、例えば2014年の交渉では協約失効後1年以上にわたって交渉が継続して行われるなど(2015年6月12日記事参照)、協約失効前に合意に至った例はない。また、過去には労使交渉が難航し、荷役業務の遅れにより米国経済に1日当たり20億ドルともいわれる巨額な損失が生じ、時の政権が介入したこともある(2017年9月8日記事参照)。

今回の労使交渉は2022年5月10日から開始され、世界的な物流混乱が長期化し、バイデン政権が関心を示していることから、早期妥結が図られるという楽観的な見方もあったが、妥結が7月以降になる見込みとの見方がこれまでも伝えられるなど(2022年5月26日記事参照)、実際には厳しい交渉が続いているとみられる。交渉がもつれ、サボタージュやストライキ、ロックアウトなどで荷役業務の遅れが生じる懸念もあったが、今回の報道から、労使双方とも自制をもって交渉していることがうかがえる。

労使交渉に関係する最近の動きとして、バイデン大統領は、港湾・サプライチェーン担当の新たな特使として、元陸軍大将で米国輸送軍司令官のスティーブン・ライオンズ氏を任命したほか(2022年6月7日記事参照)、6月10日にロサンゼルス港を訪問し、インフレーションやサプライチェーンなどの課題についてスピーチを行っている(2022年6月14日記事参照)。また、米国の小売業界団体が、バイデン政権による西海岸港湾の労使交渉への関与を2022年3月に続いてあらためて要請している(2022年6月10日記事参照)。

(永田光)

(米国)

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