バイデン米政権、港湾・サプライチェーン担当特使として米輸送軍の前司令官を任命

(米国)

ロサンゼルス発

2022年06月07日

米国ホワイトハウスと運輸省は5月27日、港湾・サプライチェーン担当の新たな特使としてスティーブン・ライオンズ氏を任命すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ライオンズ氏は元陸軍大将で米国輸送軍(注)の司令官などを歴任しており、ジョン・ポーカリ氏から職務を引き継ぐ。

ピート・ブティジェッジ運輸長官は、「米国輸送軍の前司令官であるライオンズ将軍が港湾・サプライチェーン担当特使としての役割を担い、米国のサプライチェーンを強化するために政府、労働者、産業のあらゆるレベルにまたがって働いてくれることに感謝している」と述べている。

米国では消費者物価の上昇が続いているが、「新型コロナ禍」以降の国際物流の混乱がその要因の1つとして指摘されており、港湾混雑の解消はバイデン政権にとって喫緊の課題だ。そのため、ホワイトハウスは2021年6月、サプライチェーン混乱の解消に向けたタスクフォースを組織したほか、同年8月には港湾・サプライチェーン担当の特使を任命して対応に取り組み始めた。さらにはロサンゼルス港やロングビーチ港の年中無休(24時間・週7日稼働)の運営を打ち出すなど(2021年10月14日記事参照)、対応を急いでいる。

こうした状況に加え、2022年7月1日には米国西海岸の港湾では太平洋海事協会(PMA)と国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約の失効が控えている。過去には労使交渉が難航し、荷役業務の遅れから米国経済に1日当たり20億ドルともいわれる巨額な損失が生じ、時の政権が介入したこともある(2017年9月8日記事参照)。今回の労使交渉は2022年5月10日から開始され、世界的な物流混乱が長期化し、バイデン政権が関心を示していることから、早期妥結が図られるという楽観的な見方もあったが、妥結が7月以降になる見込みとの見方が伝えられるなど、実際には厳しい交渉が続いていることがうかがえる(2022年5月26日記事参照)。

中間選挙を11月に控えるバイデン政権にとって、労使交渉が難航し、物流混乱にさらなる拍車をかけるような展開は何としても避けたい事態であり、ライオンズ氏がどのような手腕を発揮するか注目される。

(注)輸送軍は米軍において地域や機能の別に編成された11の統合軍のうちの1つ。全世界の米軍の兵站や輸送に関する作戦指揮を統括する。

(永田光)

(米国)

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