バイデン米大統領、訪問先のロサンゼルス港で海上輸送改革法の早期成立促す

(米国)

ロサンゼルス発

2022年06月14日

米国のジョー・バイデン大統領は6月10日、訪問先のロサンゼルス港で、インフレーションやサプライチェーンなどの課題についてスピーチを行った。この中で「アジアから米国に海上貨物を輸送する主要な海上輸送業者9社が3つのコンソーシアムを形成し、運賃を1,000%も引き上げている」と指摘した上で、インフレーションを緩和する方策の1つとしてサプライチェーンの円滑化を挙げ、議会に対して「2022年海上輸送改革法案(Ocean Shipping Reform Act of 2022、S.3580外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」の早期成立を促したことを明らかにした。

2022年海上輸送改革法案は、1998年以来最大の海上輸送法の見直しとなるもので、過去25年間に拡大した海上輸送業者によるアライアンスの支配力を抑制し、競争的、効率的かつ経済的な海上輸送システムを構築するため、連邦海事委員会(FMC)の規制権限を強化することを盛り込んでいる。具体的には、同法案はFMCに対し、海上輸送業者が請求する超過保管料(デマレージ)や空コンテナの返却延滞料(ディテンション)に関する苦情を調査し、それらの料金が妥当性を判断し、不当な料金については返金を命じることを求めている。また、海上輸送業者や海上ターミナルオペレーター、海上輸送仲介業者が、貨物スペースがあるにもかかわらずその利用を不当に拒否することや、その他の不公正な差別的方法に訴えることを禁止している。同法案は2022年3月31日に上院で可決されており、早ければ6月13日の週に下院で可決される可能性が高いと報じられている(「アメリカン・シッパー」6月10日)。

新型コロナウイルス禍の米国輸入需要の拡大や、感染拡大に伴う労働者不足、コンテナ不足などが相まって港湾混乱が続く中、海上輸送業者はコンテナ不足を理由に超過保管料や返却延滞料を不当に高額に請求している事例が発生していた。例えば、FMCの調査でワン・ハイ・ラインズ(Wan Hai Lines、本社:台湾)は顧客に対し不当に空コンテナ返却延滞料を請求していたことなどが判明し、85万ドルの罰金を科されている(「マリタイム・エグゼクティブズ」5月6日)。ハパックロイド(Hapag-Lloyd、本社:ドイツ・ハンブルク)も同様に、不当に超過保管料を請求したとして、88万ドルの罰金が科された(「ジャーナル・オブ・コマース」4月22日)。超過保管料や返却延滞料の過剰請求だけでなく、海運輸送業者は、米国からの輸出ではなく、運賃が高いアジア発米国向けの輸送にコンテナの手配を優先していたともいわれている。

米国向けの海上運賃は高止まりを続けている。日本海事センターによると、横浜港発ロサンゼルス港向けの20フィートコンテナの海上運賃は、新型コロナ禍初期の2020年4月は1本当たり1,600ドルだったが、2022年4月には1万1,550ドルと前年比で約7倍上昇している。こうしたコストは、米国の輸入業者や、ひいては消費者に転嫁されるため、インフレーション緩和への早期の対応が求められる。

一方で、物流関係者は、上述の法案の可決により、FMCが調査や取り締まりを開始することで物流のさらなる混乱が生じる可能性を指摘している(政治専門誌「ザ・ヒル」5月11日)。

(サチエ・ヴァメーレン)

(米国)

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