英政府、北アイルランド議定書問題解決に向けた法案提出発表

(英国、EU)

ロンドン発

2022年06月14日

英国政府は6月13日、北アイルランド議定書によって生じる問題の解決に向けた「北アイルランド議定書法案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を議会に提出したことを発表した(英国政府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同法案については、エリザベス・トラス外務・英連邦・開発相が5月17日に議会下院に対して演説を行っていた(2022年5月18日記事参照)。政府は同法案に関し、主に通関手続き、規制、税制・補助金、ガバナンスの4点に関連した実務的な問題解決を可能にするものと位置付けている。一方で、トラス外相の演説のとおり、EU側と交渉に基づき現在の議定書の内容修正や補足、置き換えを行う解決策に合意できた場合には、その内容に置き換えるとする条項も含めているとした。

政府は法案提出に合わせ、議定書の問題点と英国政府の解決策をまとめた文書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも発表。グレートブリテン島から北アイルランド向けの物品については、新スキーム「トラステッド・トレーダースキーム(Trusted Trader Scheme、TTS)」の登録事業者が物品に関する一般的な商業情報を提出することで、当該物品に関する事務手続きや検査などを不要にする(グリーンレーン)。EU向けの物品またはTTSに未登録の事業者によって北アイルランドへ移送される物品は完全な検査・管理や通関手続きの対象となるとしている(レッドレーン)。また、EUとの間で情報を共有して監視に努め、TTSを悪用する事業者に対して厳しい罰金を科すとした。物品規制について、北アイルランドへの上市に当たっては英国、EUのいずれかの規制を満たせばよいとするとしたほか、必要に応じて特定産業向けのアプローチをとることなどにも触れた。

VAT、物品税などの税制については、EUの制度が現在適用されている北アイルランドも、英国の他地域と同様に税制改革や減免の恩恵を受けられるよう、関係閣僚に英国の制度の北アイルランドへの適用可否を決定する権限を付与する。補助金については他の地域同様、4月末に成立した2022年補助金管理法を北アイルランドに適用し、英国・EU通商・協力協定のコミットメントに従って管理を行うとした(2022年5月12日記事参照)。

ガバナンスについては、議定書に関係する紛争の解決はEU司法裁判所ではなく、国際仲裁によって行うとした。

(山田恭之)

(英国、EU)

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