英外相、北アイルランド議定書変更に向けた法案提出の意向表明

(英国、EU)

ロンドン発

2022年05月18日

英国のエリザベス・トラス外務・英連邦・開発相は5月17日、議会下院に対し、アイルランド・北アイルランド議定書(以下、議定書)を変更するための法案提出につき演説を行った。外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

同相は英国政府の最優先事項を北アイルランド紛争の和平合意(ベルファスト合意)の維持とした上で、議定書をめぐって自治政府の発足が難航している現状を踏まえ、議定書が親英派(ユニオニスト)からの支持が得られていないことを憂慮しているとした。一方で、議定書の変更を認めないとするEU側の提案では問題の根本的な解決ができず、むしろ状況を悪化させるとした。

これらを踏まえ、今後数週間以内に議定書を変更するための法案を英国議会に提出する意向を示した。EUとの交渉に基づく解決策が好ましいとして、並行して欧州委員会のマレシュ・シェフチョビチ副委員長(EU機構関係・将来展望担当)とさらなる議論を行う用意があるとした一方で、可能な限り早く自治政府を回復させることが必要だとした。

物品移送や規制、VATなどの変更を提案

同相は法案を通じて変更する分野として物品移送、物品規制、付加価値税(VAT)、補助金管理、ガバナンスを挙げた一方で、共通旅行区域、単一電力市場、南北協力については議定書の内容が機能しているとして固定する意向を示した。物品移送については、EUとのデータ共有を通じて、英国にとどまる物品は不必要な手続きを免除する一方、EU向けの物品にはEU法に基づく検査・管理を行うとした。また、物品規制については、北アイルランド市場で販売される物品については企業が英国、EUのどちらの基準に基づくかを選択できるようにするとした。VAT、補助金についてはグレートブリテン島と同様に英国政府が決定を行うことができるようにする。ガバナンスについては他の国際協定と同様のかたちで行うとした。一方、同法案による変更はあくまで緊急的な対応とし、EUとの間で解決策に合意し議定書の修正がなされた場合に、修正された議定書を発効させるための条項も法案に含めるとした。

親英派政党民主統一党(DUP)党首のジェフリー・ドナルドソン氏は議会下院で、法案提出の意向を歓迎した一方、政府は行動で示す必要があるとし、短期間での法案の進展を求めた。

(山田恭之)

(英国、EU)

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