英政府、新補助金管理法の成立発表、柔軟性拡大を図る

(英国)

ロンドン発

2022年05月12日

英国政府は4月28日、新たな補助金管理制度を規定する「2022年補助金管理法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の成立を発表。同法は、2021年6月30日に議会に提出されていたもの(2021年7月2日記事参照)。英国政府は、EUの補助金制度で求められていた欧州委員会への事前の通知や承認などの事務手続きを問題視しており、今回の新制度では自治政府や自治体(以下、自治体)が補助金を提供する際に必要な手続きを簡素化し、タイムリーな提供を可能にするとしている。また、簡素化のため、英国の安全保障の保護や緊急事態への対応向けに提供される補助金などの例外を除き、全ての補助金を新制度の対象とするとしている。施行は2022年秋を予定している。

新制度では、英国全体に公正な競争条件を確保することも目的とされており、投資誘致のために自治体間で「補助金競争」が行われることを防ぐとしている一方、自治体が各地域のニーズに合わせ補助金を計画できるような柔軟性を与えるとしている。

このほか、無制限の政府保証を企業に与えることを禁止し、また信頼性の高い再建計画がある場合を除いて、経営不振または破産(ailing or insolvent)した企業への補助も禁止する。

また、競争市場庁(CMA)内に補助金提言ユニット(SAU)を設置、自治体が提案した補助金が同法への違反がないかを評価し報告する。国内競争や投資、国際貿易・投資に悪影響を及ぼしうる補助金案〔Subsidies or Schemes of Interest(SSoI)、Subsidies or Schemes of Particular Interest(SSoPI)、注〕については、SAUへの付託を推奨または義務付ける。政府はSSoI、SSoPIの基準について意見公募を実施、約3カ月後に意見への対応を発表するとしている。

政府は施行に先立ち、自治体支援のためにガイダンスを発表する予定。そのうえで施行開始まで引き続き、各自治体が英EU通商・協力協定の補助金条項を含む自由貿易協定の補助金管理条項、WTOルールのほか、北アイルランド議定書の関連条項を順守する必要があるとした。同議定書第10条では、北アイルランド・EU間のモノ、卸電力の取引に影響を与える措置にはEUの国家補助に関するルールを適用すると規定されている。しかし、政府は以前から同条の規定に関し、現在の形では機能しないと批判、今回の発表の中でもEU側にさらなる取り組みを求めている。

(注)意見公募内で、SSoIは「悪影響を与える重大なリスクをもたらしうる」補助金、SSoPIは「重大な悪影響につながりうると想定される」補助金とされている。

(山田恭之)

(英国)

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