食料品のインフレ、南西アジア中心に拡大

(南西アジア、ASEAN)

アジア大洋州課

2022年06月16日

国連食糧農業機関(FAO)は6月3日、5月の世界食料価格指数(FFPI)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。指数は平均157.4ポイントとなり、過去最高を記録した3月の水準から2カ月連続で低下した。しかし、前年同月比では、22.8%上昇している。特に、穀物価格指数と肉類関連指数の値上がりが著しい。

アジア大洋州地域においても、生活必需品の食料品の価格は上昇傾向が続く。スリランカでは、食料品(非アルコール飲料を含む)の4月のインフレ率は45.1%となった。現地紙は「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻による国際商品市況の高騰やドル不足が、必需品を含めたあらゆる商品価格を数週間のうちに何倍にも上昇させている」とする(デイリーミラー紙6月1日)。パキスタンの5月の食料品(非アルコール飲料を含む)価格も17.3%上昇した。同じ南西アジアのインドの食料品(飲食料品)価格は、8.1%上昇と上昇率は1桁にとどまるも、価格の上昇傾向は同様だ。他方、ASEAN地域はまだインフレ率の影響が抑えられている。例えば、シンガポールの4月の食料品価格のインフレ率は4.1%、マレーシアは4.2%と南西アジアと比較して、上昇率は限定的だ。

インフレの中でも、食料品価格は特に国民生活に直結するだけに、インフレの鎮静化が進まなければ、国民は政権に不満を抱く。結果的に、スリランカやパキスタンでは、首相交代や政権交代が起きている(2022年4月12日記事参照および2022年4月5日記事参照)。中央銀行はインフレ抑制のために、政策金利の引き上げを進めている。最近では、6月8日にインドの準備銀行(中央銀行)が2カ月連続で金利を引き上げた。同時に、2022年度のインフレ見通しを5.7%から6.7%に引き上げ、インフレ率の75%が食料品の価格上昇に起因する。と分析した。利上げはインフレ抑止手段ながらも、行き過ぎると、景気の低迷を招きかねない。世界銀行は6月7日、「世界経済見通し」に関わるプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で、世界経済は物価高と景気後退が併存するスタグフレーションを迎えつつあるとし、その悪影響が中低所得国に及ぶリスクに警鐘を鳴らした。

(新田浩之)

(南西アジア、ASEAN)

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