カーン首相不信任案は却下、大統領が議会解散し総選挙へ

(パキスタン)

カラチ発

2022年04月05日

パキスタン・ムスリム連盟ナワズ派(PML-N)など野党連合が3月8日に連邦下院に提出していたイムラン・カーン首相に対する不信任決議案は4月3日、カシム・スリ下院副議長により、憲法第5条(国民の国家への忠誠義務)に違反しているとして却下された(4月3日付「ドーン」紙など各紙)。その後、カーン首相はアリフ・アルビ大統領に総選挙の実施を要請。大統領は了承して下院を解散した。これにより、憲法の規定により90日以内に総選挙が実施される見通しとなったが、野党連合は納得しておらず、今後混乱も予想される。

与党・パキスタン正義運動(PTI)の一部議員の離反や、連立を組んでいた統一民族運動(MQM-P)の離脱により、議会内勢力で劣勢に立たされていたカーン首相としては、ひとまず不信任を逃れた格好だ。野党連合は不信任決議案が却下されたことを不服として法的措置を取るとしている。

カーン首相は、不信任決議案は自分を政府から取り除くための「ある国」〔後に演説で米国と発言(4月1日付「ドーン」紙)〕の陰謀で、その国が野党連合と共謀していると主張していた。3月31日に首相は主要閣僚や軍から成る国家安全保障委員会(NSC)を開き、国名の名指しは避けたものの、その国からの通信文の内容は明らかな内政干渉だとする決定を行っていた(4月1日付「BR」紙)。カーン首相は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の招請により、ロシアがウクライナを侵攻する前日の2月23日にロシアを訪問していた。米国はこうしたカーン首相の外交スタンスを問題視していたといわれる。

経済への影響は軽微か

一連の動きについて、カラチの日系企業関係者はジェトロの取材に対し、「不信任案が可決されたら、市場・経済には悪影響があっただろう。とはいえ、この国の外貨不足、インフレ、通貨安の三重苦は外部要因が大きく、首相が代わっても経済政策は変わらないだろう」と語った。また、別の日系企業関係者は「どの政権も軍とつながっており、軍の意向は無視できない。どの党が政権を取っても経済重視は変わらないだろう」と、政権が代わったとしても経済への影響は軽微ではないかとの見方を示した。

(山口和紀)

(パキスタン)

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