アジア新興国のインフレ加速が鮮明に、FAOは穀物価格高騰の持続を指摘

(世界)

国際経済課

2022年06月06日

OECDは6月2日、OECD加盟国全体の2022年4月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で9.2%上昇したと発表した〔ニュースリリース(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。3月の8.8%から上昇幅が拡大した(2022年5月6日記事参照)。主要先進国と新興国で構成するG20全体でも、4月の上昇率は同8.5%で、3月(7.9%)から物価上昇の勢いが増した。G20の国・地域別CPI上昇率(前年同月比)をみると、中国(3月:1.5%、4月:2.1%)やインド(5.4%、6.3%)などで加速した(注1)。インドでは5月、世界的な一次産品価格の動態がインドの食料インフレを牽引しているなどとし、緊急利上げが実施された(2022年5月18日記事参照)。

OECDの4月のCPI発表の同日、世界銀行は5月の一次産品価格指標を公表した〔世界銀行ウェブサイト(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。名目ドルベースの各商品価格指数(2010=100)は、エネルギーの5月の水準は前月から増加した(4月:153.19、5月:160.92)のに対し、非エネルギー(139.88、133.44)は低下した。非エネルギー全体の指数は前月から下落したが、非エネルギーのうち穀物価格指数は169.04と前月(164.60)比で上昇した。

穀物価格の上昇は、国連食糧農業機関(FAO)が6月3日に発表(英語、注2)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした食料価格指数(FFPI、2014~2016年=100)の動向からも見て取れる。FFPIは157.4と前月(158.3)から下落した一方で、FFPIを構成する穀類は173.4と前月(169.7)からさらに上昇した。FAOは、小麦価格の上昇が穀類価格上昇に寄与しているとした上で、「インド政府が発表した(小麦)輸出禁止、主要輸出国における作況懸念、さらには紛争によるウクライナにおける生産見通しの低下」により、小麦価格が高騰したとの見解を示した。

FAOがFFPIと同日に発表(英語、注2)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした穀物の需給見通しによると、2022年の世界の穀物生産量が27億8,450万トンと、前年(28億80万トン)を下回る。2022/2023年(注3)の穀物貿易量が4億6,280万トンに減少する見通しを示した上で、「とりわけ小麦、メイズ(トウモロコシ)、大麦の供給逼迫と市場不確実性、エネルギーと投入物の価格上昇により、2022/2023年シーズン前半まで世界の穀物価格はおそらく上昇し続ける」と指摘した。

(注1)OECDのニュースリリースで用いられるデータは、OECDにより調整が行われているため、各政府発表と値が異なる場合がある。

(注2)リンク先の情報は、最新リリース時に内容が更新される。

(注3)穀物のうち、小麦と粗粒穀物は2022年7月~2023年6月、コメ(精米)は2023年1~12月。

(朝倉啓介)

(世界)

ビジネス短信 1451051a868a7485