米証券取引委、監査を実施できない企業リストに中国EC大手など88社追加
(米国、中国)
ニューヨーク発
2022年05月09日
米国証券取引委員会(SEC)は5月4日、2020年に成立した「外国企業説明責任法(HFCAA)」(2020年12月22日記事参照)に基づいて米国公開会社会計監督委員会(PCAOB)が監査できない上場企業の暫定リストに88社を追加し、中国電子商取引大手のJD.com(京東商城)や中国石油化工などを新たに指定した。
HFCAAは、米国の証券取引所に上場する外国企業に関して、外国政府の支配・管理下にないことの立証義務を課すとともに、PCAOBが監査を実施できない状態が3年連続で続いた場合、当該企業の証券取引を禁止する内容となっている。証券取引の禁止については、SECがHFCAAの最終規則に基づき、外国当局の方針によりPCAOBが監査できない企業を「委員会指定企業」に指定している(2021年12月8日記事参照)。当該の指定は2段階に分かれており、まず暫定的な指定を行い、企業はそれに対して15営業日以内に不服を申し立てることができる。企業が申し立てしない、または申し立てが却下された場合に指定は確定し、「委員会指定企業」に3年連続で指定された企業の証券はSECの命令により米国の取引所における取引が禁じられる。
SECは3月以降「委員会指定企業」を順次指定しており、現時点で暫定リストには計105社、確定リストには計23社が掲載されている。PCAOBは外国当局の妨害により監査できない企業を既に200社以上特定しており(ブルームバーグ3月14日)、リスト掲載企業は今後も増える可能性がある。特定されている企業は全て中国(香港を含む)企業となっているが、米中の規制当局は中国での監査に関わる協力枠組みを協議中とみられ、合意が実現すれば、証券取引の禁止には至らない可能性もある(ロイター4月29日)。米国議会に属する米中経済・安全保障調査委員会(USCC)の資料によると、2022年3月31日時点で米国の主要な証券取引所(注)に上場している中国企業は261社と、2021年5月から13社増え、時価総額は計1兆4,000億ドルとなっている。
(注)ナスダック、ニューヨーク証券取引所、NYSEアメリカン(元アメリカン証券取引所)の3カ所。
(甲斐野裕之)
(米国、中国)
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