トランプ米大統領、米当局の監査に応じない外国企業の証券取引を禁じる法案に署名

(米国)

ニューヨーク発

2020年12月22日

ドナルド・トランプ米国大統領は12月18日、上下両院が可決した「外国企業説明責任法(S.945外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」に署名した。同法は、米国の証券取引所に上場する外国企業に関して、外国政府の支配・管理下にないことの立証義務を課すとともに、米国公開会社会計監督委員会(PCAOB)が監査を実施できない状態が3年連続で続いた場合、当該企業の証券の取引を禁ずる。法案を提出した米国議員は中国企業を念頭としており、米中関係の新たな火種となる可能性がある。

上院で法案を提出したジョン・ケネディ議員(共和党、ルイジアナ州)とクリス・バン・ホーレン議員(民主党、メリーランド州)は12月2日、下院での全会一致の可決を受けて、それぞれ「米国は、米企業が従うルールを中国が無視することを許しており、それは危険だ。下院は今日、この有害な現状を拒否する上院に賛同した」「多くの米国民は、一見まともに見えるが他の上場企業が順守する基準を守らない中国企業に投資をして、だまされている。この法律はその間違いを正すもの」との声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出している。上院では5月に全会一致で可決していた。

米国議会に属する米中経済・安全保障審査委員会(USCC)が12月2日に公開した年次報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2020年10月2日時点で米国の主要な証券取引所(注)に上場している中国企業は217社で、合計2兆2,000億ドルを調達している。その中には、アリババやバイドゥといった中国の大企業も含まれる。ただし、今回の法律は3年連続でPCAOBの査察を拒んだ場合に、当該企業の証券を米国の証券取引所で取引することを禁ずる内容となっており、外国企業には時間的猶予が与えられているとともに、違反した場合でも上場廃止までは定めていない。ニューヨーク証券取引所でアジア太平洋企業の上場担当の責任者を務めた経験のあるマーク・イエキ氏は「3年は長い時間だ」として、今回の法案は米国政府が中国政府と企業監査に関する交渉を行う上でのテコを与え得ると指摘している(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版12月2日)。なお、外国企業が外国政府の支配・管理下にないことを証明する手続きについては、証券取引委員会(SEC)が90日以内に発表することになっている。

一方、トランプ政権は現在、SECに対して、外国企業がPCAOBによる監査を受け付けない場合に、米国の証券取引所への新規上場または上場の継続を認めないとする新規則の策定を指示している(2020年8月11日記事参照)。

(注)USCCの報告書では、ナスダック、ニューヨーク証券取引所、NYSEアメリカン(元アメリカン証券取引所)の3カ所としている。

(磯部真一)

(米国)

ビジネス短信 b569b4559246112c