米証券取引委員会、外国企業の情報開示義務に関する最終規則発表

(米国、中国、香港)

ニューヨーク発

2021年12月08日

米国証券取引委員会(SEC)は12月2日、2020年に成立した「外国企業説明責任法(HFCAA)」(2020年12月22日記事参照)に基づき、米国の証券取引所に上場する外国企業に対する情報開示義務に関する最終規則を発表した。近く官報で公示する。

HFCAAは、米国の証券取引所に上場する外国企業に関して、外国政府の支配・管理下にないことの立証義務を課すとともに、米国公開会社会計監督委員会(PCAOB)が監査を実施できない状態が3年連続で続いた場合、当該企業の証券の取引を禁止する内容となっている。今回の最終規則はそれらの具体的な手続きを定めている。

最終規則に関するファクトシートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、要点は次のとおり。

  • SECは、外国の司法管轄域内にあり、かつ同域内の当局の方針によりPCAOBが審査を完了できない企業を「委員会指定企業(Commission-Identified Issuers)」に指定し、指定継続年数とともにウェブサイトで公開する。指定を受けた企業は15日以内であれば不服申し立ての機会が与えられる。
  • 「委員会指定企業」は、外国政府機関による株式保有率や、外国政府機関が当該企業に関する財務面での支配権を有しているか、中国共産党の幹部が取締役である場合はその氏名、および定款に中国共産党に関する条項が含まれているかといった情報をSECに提出することが求められる。
  • SECは「委員会指定企業」としての指定が3年継続した企業に関して、SECの管轄権が及ぶ証券市場での証券取引を速やかに禁止する。「委員会指定企業」が禁止を解くには、PCAOBが審査可能と認めた監査法人を利用することを証明する必要がある。ただし、禁止が解けた後に再度「委員会指定企業」に指定された場合、SECは最低5年間、当該企業の証券取引を禁止する。

中国共産党に関する情報開示義務が含まれているとおり、今回の最終規則は中国本土と香港に本拠を置く企業を主な対象としている。ゲーリー・ゲンスラーSEC委員長は公開声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「米国内で証券を発行したいのなら、企業はPCAOBの監査を受けなければならない。50以上の外国の司法管轄域内がそれを受け入れている一方、2つの管轄域内が歴史的に拒んでいる。中国と香港だ」と指摘している。SECは7月にも、中国政府が国外で資金調達を行う中国企業への管理を強化していることを受けて、米国の投資家を保護する観点から、中国企業に対する情報開示要求を強化する方針を発表している(2021年8月4日記事参照)。直近では、中国の配車アプリ最大手の滴滴出行が2日、6月に上場したばかりのニューヨーク証券取引所から撤退する方針を発表した。米側の規則強化も相まって、今後、米国の証券取引所で上場を行う中国企業が減少するとの見方が出ている(ロイター12月5日)。

(磯部真一)

(米国、中国、香港)

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