インド最高裁、物品輸入における海上運賃へのGST課税を違法と判断

(インド)

ニューデリー発

2022年05月27日

インド最高裁判所は5月19日、CIF契約の物品輸入において、政府が海上運賃に物品・サービス税(GST)を課し、輸入者に同税の支払いを求めることは、中央GST法違反である旨の判決を下した。2020年1月にグジャラート州高等裁判所が出した同様の判決を、最高裁判所が支持する結果となった。

財務省中央物品関税局(CBIC)は2017年6月28日付の通達で、外国からインド向けの海上運賃に対して5%のIGST(注1)を課すと定めている。財務省は同日付の別の通達も基に、リバースチャージ方式(注2)を用いて、輸入者が輸出者に代わり同IGSTを納税するよう求めてきた。他方、輸入者は別途、海上運賃を含む物品代に対するIGSTを通関時に支払うことから、この規定が二重課税に当たるとして、インド鉱業企業モヒット・ミネラルズが提訴していた。

今回の判決において、輸入者が海上運賃に対するIGSTを支払う必要がないとの判断が下されたことで、財務省は方針転換を余儀なくされる見通しだ。インド経済紙「エコノミック・タイムズ」(5月22日)によれば、これまで海上運賃に対してIGSTを支払ってきた輸入者も同額相当分の還付を求めることができる可能性があり、今後の動向に注意が必要だ。

インドでは税体系の透明性向上と簡素化を図ることを目的として、2017年7月に従来の複数の間接税を統一したGSTを導入した(2017年6月7日記事参照)。この税制改革はインドにおけるビジネス環境の大幅な改善に寄与したとして、世界銀行による国別事業環境ランキングにおいてインドの評価が上がる要因となった。一方、導入後も内容が頻繁に修正されたり、税務当局による調査・監査の内容にばらつきが生じたりするなど、まだGSTの税制自体に慣れていない企業が対応に苦慮する場面も多いのが実情だ。

(注1)GSTの種類の1つ。GSTには、国税のCGST(Central GST)、州税のSGST(State GST)、複数の州を経由する取引等に課されるIGST(Integrated GST)の3種類がある。

(注2)国外事業者による役務提供に関して、当該役務の提供を受けた国内事業者に納税義務を課す制度。

(波多野知行)

(インド)

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