インフレ加速で業種別賃金も上昇へ、主要組合は46%から62%の賃上げで合意

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2022年05月26日

5月19日付現地紙「エル・クロニスタ」電子版などによると、最低賃金が見直された3月以降(2022年3月28日記事参照)、業種別組合による賃上げ交渉が行われている。多くの業種は、国内でインフレが加速する中、おおむね46%から62%の間の段階的な引き上げで合意しているが、引き上げ幅が86%に達した業種もある。

国家統計センサス局(INDEC)が発表した4月のインフレ率は前月比6.0%増、前年同月比58.0%増(2022年5月23日付記事参照)。民間調査会社による2022年インフレ見通しは65%から70%を超えるため、これら数値に近い賃上げ交渉が行われているようだ。

各労働組合や複数の現地報道によれば、これまでに以下の業種別組合で、以下の賃上げ幅で合意されている(5月19日付現地紙「エル・クロニスタ」電子版など)。

  • 鉄道労働者組合:4月から9月にかけて合計46%。
  • 建設労働組合:5月と6月にそれぞれ10%、8月から11月にかけて各月8%、2023年1月と2月にそれぞれ5%。合計62%。
  • 食品産業労働組合:5月に18%、8月に15%、11月に14%、2023年2月に12%。合計59%。
  • 民間警備員労働組合:詳細は報じられていないが86%。
  • 銀行員組合:2022年1月から12月にかけて4回に分けて賃上げを行う。賃上げ率は合計60%。ただし、10月と11月に見直しを行う。
  • ホテル・飲食・観光業労働組合:9月に18%、12月、2023年1月と3月にそれぞれ14%。合計60%(飲食業労働組合)。
  • トラック運転手労組:5月に15%、9月に16%で、合計31%。10月に見直しを行う。
  • 海運・湾港組合:段階的な賃上げは行わず、一度で53%。
  • 商業労働組合:4月から2023年3月にかけて、7回に分けて合計59.5%。
  • ガソリンスタンド労働組合:5月、6月、8月、10月にそれぞれ12%で、合計48%。

民間調査会社が418社を対象に行ったアンケート調査によると、中間管理職、管理職など労組に加盟していない従業員の2022年の年間賃金上昇率は平均56%となる見通しだ。ただし、各業種の業績によって賃金上昇率は異なるようだ。例えば、好業績が目立っているのはフィンテック、金融サービス、石油&ガス、鉱業、物流関連、自動車産業だが、一方で小売り、観光業、農業、機械類、建設業では、高い賃金の上昇は見込めない(5月10日付現地紙「エル・クロニスタ」、5月16日付「フォーブスアルゼンチン」、5月23日付現地メディア「TN」など)。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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